怪我

シンスプリントの原因となり得る5つのリスクファクターを知る

シンスプリント怪我痛み下肢

普段ジョギングをされる方や、高いレベルでランニング・マラソンをしている選手にとって、一番なりたくない怪我として「シンスプリント」をあげる人は多いのではないでしょうか。シンスプリントになってしまうとなかなか痛みが引かないため、走ることを控えないといけない場合や、最悪の場合は疲労骨折に進行してしまって半年ほど走れない、、、なんて状況にもなる可能性があるため、できるだけ予防したい怪我だと思います。

シンスプリントを予防するためには、シンスプリントの原因となる可能性があるものを知って、それにならないようにすることです。よって今回は、シンスプリントの原因となる可能性があるもの=「リスクファクター(危険因子)」として多くの研究であげられているものを5つ紹介します。

もし以下で紹介するリスクファクターに1つでもあなたが当てはまったら、シンスプリントになってしまう可能性があると言えます。ぜひ本文を読んで、今日からシンスプリント予防をしていきましょう。


>>今回の参考文献はこちらです。

BMJ_MTSS

Risk factors for medial tibial stress syndrome in physically active individuals such as runners and military personnel: a systematic review and meta-analysis
ランナーや軍人さんなどがシンスプリントになってしまうリスクファクターを調査したメタアナリシス。2014年のBritish Journal of Sports Medicineより。

 

MTSSrunners

Risk factors associated with medial tibial stress syndrome in runners: a systematic review and meta-analysis
ランナーに絞って、シンスプリントになってしまうリスクファクターを調査した2013年発表のシステマティックレビュー/メタアナリシスです。

 

JAT_MTSS

Risk Factors for Medial Tibial Stress Syndrome in Active Individuals: An Evidence-Based Review
信頼度の高いエビデンスをまとめたレビューです。2016年のJournal of Athletic Trainingより。

 

スペシャルテスト教科書「Orthopedic and Athletic Injury Examination handbook」
大学院のATプログラムで使っていた、スペシャルテストの教科書です。

 

シンスプリントの原因となり得る5つのリスクファクター(危険因子)

シンスプリントのリスクファクターを調査したエビデンスを見てみると、シンスプリントの原因となり得るリスクファクターは大きく分けて5つあることがわかりました。1つ1つ解説していきます。

1)BMIの高さ

BMIメタボシンスプリント原因体重

BMIとは「Body Mass Index」の頭文字をとったもので、肥満度を表す指標として国際的に使われている指数のことです(BMIについてもっと詳しく知りたい方は、過去の記事「BMIとMETSを知って安全に効果的に体脂肪を減らそう!」を読んでみてください)。

BMIは「体重【kg 】÷(身長【m】× 身長【m】)」で測ることができます(身長がメートルのところに注意)。

BMIは、同じ身長の人が2人いたとすると、体重が重い人のほうがBMIの数値も高くなります。それが脂肪であろうが、筋肉であろうが、です。研究によれば、一般の人で脂肪が多い場合も、アスリートで筋肉の重さで体重が重い場合でも関係なく、「BMIが高い人は、BMIが低い人よりもシンスプリントになる可能性が高い」ということを示しています。

脂肪だろうが筋肉だろうが関係ないため、それはつまり「脚により重い負荷がかかる状態が長く続くと、シンスプリントになる可能性が高くなる」と言えます。つまり、たとえBMIが高くない人でも、常に重い荷物を持って外を歩き回っている会社員の方や、子供を常におんぶして動き回ってる主婦の方などは、シンスプリントになるリスクが上がるということになります。

2)荷重したときに扁平足(へんぺいそく)になる

内側アーチ土踏まずシンスプリント

「扁平足(へんぺいそく)」とは、簡単に言えば「足の内側のつちふまず(=内側縦アーチ:上写真参考)が下がってしまっている足」のこと。「私、土踏まずがないのよ」なんて言い方をする人もいますね。

この土踏まず/内側縦アーチは、歩いたり走ったりジャンプしたりして足を地面に着いたときに、その衝撃を吸収してくれる役割があります。つまり、このアーチがしっかり働いてくれないと、足が地面に着いた時の衝撃を吸収しないため、その衝撃がそのまま足・すね・膝などにかかってしまうことになります。これがずっと続いてしまうと、その衝撃に脚の筋肉や骨などが耐えられず、どこかに痛みが出たり、シンスプリントのような怪我を引き起こしてしまう可能性があります。

【トレーナー向け】扁平足チェックのスペシャルテスト

動きの中で内側縦アーチがしっかり働いているかどうかをチェックするために行うテストが「Navicular Drop Test(舟状骨落ち込みテスト)」というものです。このテストをすることで、ただ見た目で土踏まずがあるかないかではなく、実際に動いている時に(=足に体重がかかったときに)アーチがしっかりと体重を支え、衝撃を吸収できているかどうかがわかります。

たとえ見た目ではアーチがあるように見えても、足に体重をかけた時にそのアーチが極端につぶれてしまったら、衝撃はしっかり吸収されているとは言えないため、結果シンスプリントをはじめとした足の怪我につながってしまう可能性があります。

  1. 長座の状態で(=足に体重がまったく乗っていない状態で)、舟状骨の一番出っ張っている部分にサインペンなどで印をつける
  2. 次に、イスなどに座った状態で、測定する足を地面にそっとつける。体重は乗せない
  3. トレーナーは、測定する足がニュートラルの位置にあることを確認して(=回内も回外もしていない状態)、名刺くらいの大きさのカードや紙を足の内側に地面と垂直に置き、先ほどマークした舟状骨の点と同じ高さのところを、カードにマークする
  4. 次に、患者には立ってもらって、体重を両足に均等に乗せてもらう
  5. 体重が両足に均等に乗った状態で、再び舟状骨の点と同じ高さをカードにマークする
  6. 2つの点の距離が1cm(10mm)以上あったら陽性

陽性の場合、歩いたり走ったりジャンプしたりといった動きの際に、足にかかる負荷・衝撃があまり吸収されていない可能性があります(=シンスプリントになる可能性が、このテストで陰性の人よりも確率が上がる)。

舟状骨は、内くるぶしの下やや前方にある、少しだけ出っ張っている骨です。このNavicular Drop Testで10mm以上の落ち込みが見られた人は、10mm以下の人よりも約2倍シンスプリントになるリスクが上がる、ということです。

3)足関節底屈の可動域の増加

シンスプリントつま先接地ランニング

「可動域」が怪我の原因となる可能性があると聞くと、多くの人は「可動域がない(=足首が固い)」とダメなんだろうと予想すると思います。私もそう予想しました。しかし、違いました。これは逆で、「足関節の底屈(=長座で座ったとき、つま先を自分と逆側に持っていく動作)の可動域が大きい人は、標準の可動域の人よりもシンスプリントになるリスクが上がる」という結論でした。

理由としては、足関節の底屈の可動域が大きいと、歩いたり走ったりしているとき、足が地面に着地するときに「つま先から着地」しやすくなる、ということが示されています。

つま先から着地をすると、シンスプリントの痛みを生み出すすねの内側にある筋肉や組織により負荷がかかりやすくなるため、その「つま先接地」になりやすくなってしまう「足関節底屈の可動域の増加」が、シンスプリントの原因となり得るリスクファクターの1つとして考えられます。

足関節の底屈可動域の測り方

関節可動域表示ならびに測定法(日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会)」によると、足関節底屈の可動域は「45度」となっています。

測り方は、まず、足が地面につかない高さのベンチやベッドなどに座ります(=膝が90度曲がった状態で測る)。足の裏が地面と平行になる位置を0度として、つま先を地面側に動かしていきます(膝の角度は変えないように)。45度が基準で、それを超えたら可動域が標準よりも大きい、となります。

今回紹介した足関節底屈の可動域の測定方法は「Active Range of Motion(=自動的可動域)」です。これはつまり「患者自身が自分の力で動かせる可動域の範囲」ということ。これに対して、患者は何もせずにトレーナーなどが関節を動かして可動域を測定する方法を「Passive Range of Motion(=受動的可動域)」と言います。

4)股関節外旋の可動域の増加&低下

シンスプリントになってしまう可能性のあるリスクファクターとして、股関節の外旋の可動域(上写真参考)が小さい(=固い)人、または大きい(=柔らかい)人、というのも挙げられていました。ですが、なぜ股関節の外旋の可動域がすねの怪我につながるのか、明確にはわかっていないということです。

よって、理由はわからないということですが、股関節内旋と外旋の可動域のバランス(=固すぎず、柔らかすぎず)はシンスプリントの予防だけでなく、様々な怪我の予防やパフォーマンスアップにもつながるため、ぜひ股関節の動きの改善・バランスをよくするリハビリやトレーニングを取り入れましょう(股関節内旋・外旋トレーニングについては次回)。

股関節外旋の可動域の測り方

関節可動域表示ならびに測定法」によると、股関節内旋・外旋ともに「45度」が標準です。

測り方は、足関節底屈の測定のときと同じく、足が地面につかない高さのイスやベッドに座った状態で行います。脚をリラックスさせた状態で、膝の角度は変えないように足を内側に回旋(=股関節外旋)させていきます。注意したいのは、「足を内側に動かす=股関節外旋(写真左)」「脚を外側に動かす=股関節内旋(写真右)」です。間違えないようにしましょう。

座位での測定方法が一般的ですが、私は立った状態(=立位)での可動域を見ることが多いです(上写真参考)。これは個人的な好みです。立位の方がより実際のスポーツや動くポジションに近いため、というのが理由です。参考までに!

5)ジョギング・ランニングを始めてすぐ

膝ランニングジョギング怪我

最近になってジョギングやランニングを始めた、というものも、シンスプリントの原因となり得るリスクファクターとして挙げられます。参考文献には「ランニング経験の少なさ」という表現がされています。

特に道路などの「硬い道」を走る場合は、最初の1ヶ月くらいはゆっくりしたペースで、ジョギングの時間もまずは短めに行なって、その負荷・衝撃に脚を慣らしていきましょう。どれくらいの期間で脚がその衝撃に適応するか、というのはまだエビデンスとして結論が出ていないということですが、あまりジョギング経験がなかったり、最近まったく走ってなくて久々に走る、という人がいきなり早いペースでジョギングをしたり長い時間走ると、シンスプリントになってしまう可能性があります。

少しずつ走る速さ・距離・時間の長さ・頻度を増やしていくことが大切です。

まとめ

シンスプリントの原因となり得るリスクファクターにフォーカスしてみました。今回の参考文献の1つであるNewmanらによるメタアナリシスには、シンスプリントになってしまうと、復帰までに3ヶ月から長いと10ヶ月ほどかかるケースもある、とありました。やはり予防が大切です。

原因を知ることで、それが起きないようにと、未然に予防・対策をすることができます。次回の記事で、これらの原因を改善する予防エクササイズや、シンスプリントになってしまった方が行うべき治療法などを紹介できたらと思います。

CHAINON管理人

EXOS8のコピーATSUSHI(山口淳士)。米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)。外資系企業内のフィットネスセンターで健康指導・運動指導を行う。その他、ストレッチポール公式ブログでの記事監修や、GAP英語勉強会の講師なども。

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