心肺蘇生法の手順を詳しく解説!大切な人を救えるように

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CPRとはCardioPulmonary Resuscitationの略で、心肺蘇生法のことです。多くの方がイメージされるであろう、倒れてる人に対して行う心臓マッサージと人工呼吸です。滅多に起こることではなく、自分がその場に居合わせるということは、もしかしたら一生に一度あるかないかという確率かもしれませんが、いざ、そのような状況に遭遇したときに適切な応急処置ができるかどうかで、倒れている人の生存率が大きく変わります。

心停止というのはスポーツ現場だけでなく、日常生活でも起こり得ることです。もし目の前で自分の親、友人、大切な人が急に倒れて意識を失ったときに、あなたはその方を助けてあげられますか?

倒れている方全員とは言いません。せめて、皆さんの身の回りにいる大切な方が、急に倒れられたときに、自分の手の届く範囲にいる方は皆さんの手で助けてあげてほしい、そんな思いで今回はこの記事を書かせていただいています。

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>>CPRは国や団体によってマニュアルが変わりますが、今回は日本赤十字社の指導法を参考にしています。

ダウンロード

☆今回の参考にしている日本赤十字社のガイドラインはこちらです!☆ 

日本赤十字社 心肺蘇生


心肺蘇生法の手順

まずはCPRの手順を紹介します。

 

① 傷病者と周囲の安全確認

傷病者(倒れている人)を見かけたら、すぐに近づくのではなく、まず周囲の安全を確認しましょう。

練習、試合中であれば、審判、指導者が傷病者に気づいてプレーが中断しているか、道端では車など通っていないか、また傷病者に近づくことで自分自身に危険が及ばないか、などを確認します。まずは傷病者と自分自身の安全を確認し、安全な場所、環境で心肺蘇生法を行える状況を作ります

このときに、傷病者が大量出血していないかも確認します。もし、大量の出血がみられる場合は、まず止血を行います。そうしないと、心臓マッサージを行った際に傷口から血が流れて、それが原因で命に危険が及びます。

 

② 意識の確認

周囲の安全が確認できたら、傷病者に近づいて意識の確認をします。傷病者が反応しやすいように「大丈夫ですか?」や「〇〇さん、〇〇さん」と軽く肩を叩きながら声を掛けましょう。

この事故がスポーツ現場等で、受傷時に頭や首を打っていたり、頭から地面に落ちて意識がなくなった場合は声を掛ける前に、まず首と頭の固定をします。これは、脊髄に対する二次的な障害を防ぐためです。首を固定する前に声を掛けてしまうと、受傷者は無意識のうちに首を動かしてしまい、受傷した部位を悪化させてしまったり、この動きが原因で脊髄を損傷してしまうこともあります。

 

意識がなかったり、朦朧としている場合はすぐに周囲に助けを求め、周りの方にAED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)を探して持ってきてもらうことと救急車の手配をお願いしましょう。この時のポイントは自分で救急車等の手配をするのではなく、周囲の方に頼んで自分は処置の手を止めないようにしましょう。自分以外に心肺蘇生法の心得がある方には積極的に協力を求めることも重要です!

AEDは到着次第電源を入れて、自動音声による指示に従って、操作を行ってください。以下で説明する心臓マッサージや人工呼吸よりも、なによりこのAEDをいち早く使用することが心肺蘇生法では最も大切です!!

 

③ 呼吸の確認

意識の確認が終わったら、次に呼吸の確認をします。方法は

1、胸部、腹部の上下動があるか。

2、鼻、口から息が出ているか。

です。

1は目で見て、2は手を近くに当ててみると確認しやすいです。

呼吸の確認が終わった時点で、考えられる状態は3種類あります。

A 意識があり、呼吸もある

B 意識がなく呼吸はある

C 意識も呼吸もない

 

なぜ3種類かというと、「意識があり、呼吸をしていない」という状態は考えられないためです。

このとき、AとBのときは心肺蘇生法を行わず、Aは必要な応急処置を、Bは救急車を呼んでから傷病者を安全体位にして救急車を待ちます。

Cのときは心停止とみなし心肺蘇生法に移ります。

 

④ 胸骨圧迫(心臓マッサージ)

まず、心臓マッサージって何を目的に行うのかご存知でしょうか?心臓マッサージは止まっている心臓を再び動かすために行うのではないですよ!実は僕も最初は勘違いしていたんです。。。

 

心臓マッサージは傷病者の全身に血液を送るために行います。そもそも心臓とは全身に血液を送るポンプ機能を持った器官です。心臓が鼓動するたびに、心臓の大動脈から血液が送り出され、全身の細胞に酸素を運び、そのときに体内の二酸化炭素を回収し、肺でまた二酸化炭素と酸素を交換し、心臓に戻ってからまた全身に酸素を供給する、というサイクルを行っています。

なので、心臓が止まってしまうと、全身に酸素が供給されなくなります。ここで最も影響を受けるのが脳です。心停止後3分ほどで脳細胞は死に始めるそうです。

※参考文献 市民防災ラボ「助かるはずの命を救う救命処置の必要性

 

日本では救急車の平均到着時間は約8分と言われているので、救急隊員が到着する前に誰かが心臓マッサージを始めないと、傷病者が意識を取り戻したとしても、脳の後遺症を患う可能性が非常に高くなるということです。

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※ 画像は「Survive Cardiac Arrest」より

 

上のグラフは心肺蘇生法を受けるまでの時間と生存率の関係を表しています。何も処置を受けないと8分後には生存率が0%になっていしまいます。少し残酷な言い方をすると、何も処置をしなければ、救急車が到着した時点で蘇生はほぼ不可能な状態に陥ってしまいます。これに対し、CPRだけでも行うことができれば、生存率が0%になるのを12分後まで引き延ばすことができるので、救急車が到着次第AED等の治療を受けることができるので、生存率は大幅に上昇します。

 

心臓マッサージのやり方は上記で紹介した日本赤十字社のHPに図解でわかりわすく説明してあるので、そちらを読んで頂きたいです。特に注意することは、まず心臓マッサージは非常に疲れるということです。1分も連続して行うと、相当な疲労感を感じるほど激しい運動になります。なので、周囲に協力を求めて、数分おきに協力者と交代で行うとよいでしょう。

 

もうひとつ注意する点は、圧迫するときの強さです。

※参考文献 「CPR: More Rib Fractures, But Better Survival Rates」より

 

この記事では多くの人が心臓マッサージを行うときに十分な力を加えていないという研究結果が報告されています。いざ心臓マッサージを行うときに「強く押しすぎたら危ないんじゃないか?」とか「ろっ骨を折ってしまうんじゃないか?」と考えてしまうのではないかと思います。しかし、十分な力で押さないと適切な処置にはならないというのも事実です。

「より多くのろっ骨骨折、しかしより良い生存確率」というのがこの記事の題名です。僕も参加したCPRの講習会で実際に何度もCPRを経験した救命救急士の方のお話を聞いたことがありますが、心臓マッサージを適切に行うとほぼ100%くらいの確率でろっ骨は折れてしまうようです。ろっ骨骨折よりも血液を全身に送るほうがはるかに大事なので、心臓マッサージは適切な力で、気持ち強めに圧迫するのがよいと思います。

 

⑤ 気道確保

心臓マッサージを30回行った後は気道の確保を行います。下顎を少し上に持ち上げ、口を開けて空気の通り道を開いてやります。このときに注意することは、傷病者に頸部の損傷が疑われる場合は、下顎を上に持ち上げてしまうと首が反ってしまい、頸部の怪我を悪化させてしまう恐れがあるので、下顎は持ち上げず、口を開くだけにしましょう。

 

※講習会等で練習し、適切な知識がある方は、頸部の損傷が疑われる傷病者の気道確保の際に下顎挙上法(顎骨を持ち上げて気道を開く)を行ってください。ただし、この方法は訓練された人でないと気道の確保が難しいので、無理をせずに適切な知識と技術がある訓練された方のみ行うようにしてください。

 

⑥ 人工呼吸

気道の確保ができたら次に人工呼吸を行います。まず、人工呼吸中も気道を確保し続けるために片手で傷病者の顎を押さえ、顎が下がって気道が閉じないようにします。もう片方の手は傷病者の鼻を摘まみ、入れた息が鼻から抜けてしまうのを防ぎます。これが結構忘れやすく、僕も講習会中に人工呼吸の練習で、いくら息を入れても練習用の人形の胸が膨らまないなーと思っていたら、鼻を摘まみ忘れていたことが多々ありました!

 

息を入れるときは口を大きく開け、傷病者の口を大きく覆うようにして、1秒間ほどの吹込みを2回行います。このときに傷病者の胸の動きに注意して、息を吹き込むのと同時に胸が膨んでいるかを確認します。

人工呼吸を終えた後に呼吸が回復したかを確認し、変化がない場合は心臓マッサージに戻ります。

 

家族や知人ならともかく、全くの他人に人工呼吸を行うことに抵抗があるという方は多いと思います。そのような方は市販されている人工呼吸用マスクを持ち歩くとよいと思います。

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これは携帯式のもので、バッグの端に付けておいても邪魔にならないほど小さいです。中には折りたたんである人工呼吸マスクが入っています。マスクには使用方法が書いてありますし、これを使用すると傷病者の口と直接触れることもなく、感染症の心配もなくなります。僕もこのマスクの存在を知ってから今まで約8年ほどは常に持ち歩くようにしています。備えあれば憂いなしです☆

 

ただ、最近の研究によっては人工呼吸の必要性に疑問の声も出てきています。以下の図は日本の研究機関SOS-KANTOという団体が発表したものです。

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※画像は「日本が世界へ導く心肺蘇生の新しい流れ」より

 

まずこれは「一般市民が救命処置をした際」の研究結果です。このグラフを見ていただければわかるように心臓マッサージと人工呼吸を行った傷病者よりも、心臓マッサージのみの傷病者のほうが生存退院率がやや高くなっています。同研究の中で一般市民のCPRの施行率は20~30%程度と報告されており、理由として、人工呼吸への抵抗感とCPRの複雑さというのがアンケート結果として挙げられています。このことから一般市民に対しては心臓マッサージのみのCPRを普及していこう!という動きがあるようです。

 

ただし、これはあくまで「一般市民」がCPRを行った際の結果で、講習会等で正しい知識と技術を身に着けた人なら、もちろん人工呼吸も行ったほうが良いと思います。なので、人工呼吸はしなくてええんや~ではなくて、まずは講習会で正しいCPRを覚えて、いざCPRを行う必要がある場面に出くわし、頭が真っ白になって、どうしていいかわからないときには「とにかく心臓マッサージだけでもしよう!」という行動が取れれば良いかと思います。

 

もう一つ注意点として、子供へのCPRの場合は必ず人工呼吸をしてください。子供が心停止になる原因では窒息や溺水などの呼吸器系の問題で心停止に陥ることが多いです。なので、窒息などの疑いのある子供に対しては心臓マッサージよりも先に人工呼吸を行うほうがよいです。僕が参加した講習会では、そのようなケースではまず5回の人工呼吸を行ってから心臓マッサージに移るようにと指導を受けました。子供に対するCPRは大人に対するものと多少の違いがあるので、詳しくは上記の日本赤十字社のHPで確認してください。

 

以上の処置をしても意識が回復しない場合は、心臓マッサージ30回、人工呼吸2回のサイクルを救急隊員が到着するまで繰り返します。このサイクル中もAEDは常に使用し続けて、AEDの充電が完了次第手を止めてAEDを使う、AEDが充電している間はサイクルを行う、とうことを繰り返します。CPRを長時間続けることは非常に体力を使うので、協力者と2サイクルごとに交代するなどして、傷病者に十分な力で心臓マッサージが行えるようにしてください。

 

まとめ

心停止はいつ起こるか本当にわかりません。

僕は2年前ロンドンでトッテナムvsボルトンというサッカーの試合を観に行きました。当時ボルトンに日本人の宮市君が所属していたので、彼のプレーを観に行ったのですが、試合の途中でボルトンの選手ファブリス・ムアンバ選手が心停止で倒れました。

観客席からはムアンバ選手が倒れているのもわからず、観客はなぜ試合が止まっているのかわかりませんでした。ピッチの一か所に駆け寄るボルトンのトレーナーとドクター。それに続き主審、トッテナムのトレーナーとドクター、救急救命士と担架、両チームの選手たち。ショックを受けている選手たちの合間からボルトンのトレーナーがムアンバ選手の横に膝立ちでいるのがわかり、彼の両肩が上下しているのを確認して全てを把握できました。

ムアンバ選手はそのまま救急車で病院に搬送され、試合は中止に。観客はなんともいえないショックを受けながら家路についたことを今でも覚えています。ムアンバ選手は両チームの医療スタッフの尽力により奇跡的に命を取り留めることができましたが、心臓が止まっていた時間は78分間。まさに奇跡的な生還として話題になりました。

 

このとき僕は自分がトレーナーとしてその場にいたら選手を助けられたかどうか不安になりました。もちろん救命法は心得ていましたが、いつでもどこでも正確な処置をする自信はありませんでした。やはり人の命に関わることですので、こまめに復習していつでも行える心の準備をしておく必要があることを学ばせてもらった経験でした。

 

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