トレーナー向け!12種類ある脳神経の働きと評価方法まとめ

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つい先日、チアリーディングの選手が空中に変な体勢で跳んでしまい、下で支える人がキャッチすることができず、そのまま地面に背中から落ちてしまいました。僕はその場にはいなかったので、実際にどのように落ちたのかは見ていませんが、チアのコーチが言うには、落ちた後、30秒ほど意識がなかったそうです。

コーチからの電話を受けて、僕はその場に向かいました。チアの選手はすでに意識は戻っていて、仰向けに横になっていました。頭〜顔〜首〜肩〜上半身〜下半身とすべてチェックして、なんの問題もなく、大事には至りませんでしたが、脳神経をチェックしてる際に(全部チェックしたよな…!?!?)と、少しだけ不安になりました。

今回は僕の復習もかねて、12種類ある脳神経の名前・働き、さらには評価方法についてまとめてみました。

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>>参考文献はこちら。

「Examination of Orthopedic and Athletic Injuries Edition 3」 

 アメリカの大学院のATCプログラムで勉強していたときに使っていた教科書です。

 

Cranial Nerve Examination OSCE Station Guide

脳神経のチェック方法について、とてもわかりやすくきれいにまとめられたサイトです。

 

12種類ある脳神経の名前とその働き

脳神経(英語ではCranial Nervesといいます)とは、脳から直接目や顔、首や体に伸びる、左右に12対 (つい) ある神経のことです。そして、この12対の神経には、それぞれ名前がついています。

 

I 脳神経:嗅神経 (Olfactory nerve) = 嗅覚

嗅神経は、においの感覚を伝える脳神経です。

チェックの仕方としては、特有のにおいがあるもの(コーヒー/オレンジ/酢など)を鼻の下において、なんのにおいかを聞きます。左右の鼻の穴を別々に調べます。

 

II 脳神経:視神経(Optic nerve)= 視覚

視神経は、視覚の情報を伝える脳神経です。

視力検査表で調べるのが病院では一般的ですが、スポーツの現場に視力検査表はなかなかありません。この視神経は、ペンライトで光を目にあてて、黒目が小さくなるかの反射をみることで確認することができます。

 

 

III 脳神経:動眼神経(Oculomotor nerve)= 眼球運動・まぶた・縮瞳

IV 脳神経:滑車神経(Trochlear nerve)= 眼球運動

VI 脳神経:外転神経(Abducens nerve)= 眼球運動

この3つの神経は、目の動きをコントロールします。

この3つの神経のチェック方法は、人差し指を選手の鼻から約60センチほど前に立て(右写真参考)、上下左右対角線に人差し指を動かして、選手がその指を両目でしっかり追えるかどうかをチェックします。

動眼神経を損傷すると、眼は上下と内側方向に動かなくなってしまいます。滑車神経を損傷すると、下方向と内側に眼が動かなくなり、外転神経を損傷すると、眼が外側に動かなくなってしまいます。また、動眼神経は「まぶたを上にあげる」という動作もおこなっています。目の上のまぶたが下に垂れ下がっていたら、動眼神経が傷ついている可能性があります。

 

V 脳神経:三叉神経(Trigeminal nerve)= 顔面・鼻・口・歯の知覚・咀嚼(そしゃく)運動

三叉神経は、顔の感覚をコントロールしています。また、かむ動きもこの神経によって行われています。

チェックの仕方は、綿棒やコットンなどを使って、おでこ ⋅ 鼻 ⋅ こめかみ ⋅ ほほ ⋅ あごをさわり、感覚があるかどうかを聞きます。さらに、歯をくいしばってもらうことで、かむ動きがしっかりできるかどうかを調べます。トレーナーは指で口を開く方向に力をいれて、抵抗できればオッケーです。

 

VII 脳神経:顔面神経(Facial nerve)= 表情筋・味覚

顔面神経は、顔の表情をつくる筋肉をコントロールしています。また「味覚」もこの神経が支配しています。

チェックの仕方は、笑ってもらったり、口を大きく横に開いて歯をみせてもらって、顔の筋肉をしっかり動かせるかどうかをみます。

 

VIII 脳神経:内耳神経(Vestibulocochlear nerve)= 聴覚・平衡感覚

内耳神経は「聴覚(=聞く力)」と「バランス」をコントロールしています。

「聴覚」のチェックの仕方。音叉を使って行う「Webersテスト(上写真)」でチェックすることができます。

音叉を震わせたあと、音叉の下(=柄)の部分をおでこの真ん中に当てます(右写真参考)。音叉の振動による音が両耳で同じように聞こえたら、内耳神経は正常です。もし片耳だけ音が聞こえたり、片耳だけうるさく聞こえたら、内耳神経の損傷が疑われます(うるさく聞こえる方の耳に異常がある可能性があります)。 

 

もう1つのチェックの仕方が「Rinneテスト(右写真)」というもの。これも音叉をつかって行います。

音叉を震わせたあと、その音叉の下の部分を乳様突起(耳たぶのうしろ。右写真左)にあてて、音がどのように聞こえるかを確認します。そのあと、再び音叉を震わせて、今度は耳の横において(右写真右)、音がどのように聞こえるかを確認。耳の横においたときの方がうるさく聞こえれば正常です。

 

バランス能力のチェックは「Rombergテスト」や「BESSテスト」などいくつかの方法がありますが、バランス能力の低下は、この内耳神経の損傷以外にもたくさんの原因が考えられます(疲労、脳しんとう、足首や下半身の怪我など)。そのため、バランス能力のテストのみで内耳神経のチェックをすることは避けましょう。ここではバランスのテストは省略します。

 

 

IX 脳神経:舌咽神経(Glossopharyngeal nerve)= 口蓋・咽頭筋

X 脳神経:迷走神経(Vagus nerve)= 咽頭・咽頭反射

この2つの神経は、ともに咽頭(いわゆるのど)をコントロールしています。

チェックの仕方は、口を大きくあけてもらいながら「アー」と言ってもらいます。その時に、のどちんこが中心にちゃんとあるかどうかをチェックします(右写真参考)。アーと言っている間、のどちんこが左側や右側にずれてしまった場合は、これらの神経の損傷が疑われます。

 

また、これらの神経は「咽頭反射」を使ってチェックをすることもできますが、これは医療の専門家がやるべきことなので、ここでは省略します。英語ですが、YouTube(←クリックするとその動画にとびます。27秒からが咽頭反射の動画です)で紹介されていたので、興味のあるかたはみてみてください。

 

 

XI 脳神経:副神経(Accessory nerve)= 胸鎖乳突筋・僧帽筋

副神経は、胸鎖乳突筋と僧帽筋を働かせる神経です。ということで、この2つの筋肉がしっかり働くかどうかをチェックします。

胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)は、首を前に曲げたり、顔を横に回転させる筋肉です。チェックの仕方は、まず顔を横にむけてもらいます。そしてチェックする人は、その横に向いた顔を元の位置に戻す方向に力をかけます。抵抗して、横に向いた顔の位置をキープできれば、胸鎖乳突筋はしっかり働いています(上写真)。

 

僧帽筋(そうぼうきん)は、シュラッグ(肩をすくめる動き)をしてもらうことでチェックします。肩をすくめてもらった状態で、その肩を上から下に元に戻すような力を加えて、その力に抵抗して肩をすくめた状態をキープできればオッケーです。

 

XII 脳神経:舌下神経(Hypoglossal nerve)= 舌の筋肉

舌下 (ぜっか) 神経は、舌の筋肉をコントロールしています。

チェックの仕方は、舌をベローっと口から突き出してもらいます(右写真参考)。もし舌がまっすぐでてきたらオッケー。もし舌が右側に出たり、左側に出てきたら、片側の舌の筋肉が弱くなっている可能性があります。右の写真の女性の舌は、左側に出てきてますね。舌下神経の損傷が疑われます 。

 

脳神経の損傷が疑われるようなこと(交通事故/高いところからの落下/アメフトなどでの激しいタックルなどの、頭や首にものすごい衝撃がかかるような出来事)が起きたら、すぐに脳神経のチェックをしましょう。またそのチェックは1回だけではなく、15〜20分おきに何度か行いましょう。もちろん、何か少しでも異常があればすぐに救急車を呼びましょう。

 

まとめ

脳神経の損傷の発見が遅れると、重大な障害となって残ってしまう可能性があります。アメフトやラグビーといったコンタクトスポーツに関わるトレーナーや指導者は、しっかりと脳神経のチェックの仕方を覚えて、少しの異変にも気がつくことができるようになって、選手 ⋅ 子どもを守りましょう。

 

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