筋膜リリースについて知っておいてほしいこと

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皆さんは「筋膜リリース」という言葉を聞いたことがありますか?

近年、スポーツ現場・フィットネス現場などで使われ始めている、筋肉・筋膜の柔軟性を向上させるためのテクニックのこと。この筋膜リリースをするツールとしてよく使われるのが「フォームローラー」や「マッサージスティック」です。

これらの筋膜リリースツールを現在使っている人は、どのような目的で使っていますか?

準備運動のため?怪我の予防のため?体が柔らかくなりたいから?パフォーマンス向上のため?筋肉痛の軽減のため?クールダウンとして?

今回の記事では、フォームローラーを使っての筋膜リリースは、どのような効果があるのか。上に挙げたような目的は達成されるのか。その辺を検証していきたいと思います。

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>>参考文献はこちらです。

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The Effects of Self-Myofascial Release Using a Foam Roll or Roller Massager on Joint Range of Motion, Muscle Recovery, and Performance: A Systematic Review

フォームローラーやローラーマッサージャーを用いてのセルフでの筋膜リリースの、関節可動域・筋肉の回復・パフォーマンスにおける効果を調べた2015年のシステマティックレビューです。

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Effectiveness of Myofascial Release Therapies on Physical Performance Measurements: A Systematic Review

運動パフォーマンスへの筋膜リリースの効果についてまとめた、Mauntelらによる2014年のシステマティックレビューです。

 

筋膜リリースとは?

筋膜リリースとは、筋膜の委縮・癒着を引き剥がしたり、引き離したり、こすったりすることで、正常な状態に戻すこと(triggerpoint.jpより)

上の写真で紹介したフォームローラーは、その上に筋膜リリースを行う部位をのせて、自分の体重を使って地面で転がしながら筋膜リリースを行うツールです。

 

とはいえ、2015年という比較的最新のシステマティックレビューにも、フォームローラーやマッサージスティックを使った筋膜リリースによって身体の生理学的に実際にどのようなことが起きているのか、がまだちゃんとわかっていないというのが現状です。

筋膜リリースの効果

筋膜リリースについての研究から、しっかりと “効果がある” と研究で証明されているのは以下のものです。

  • 関節可動域の向上(=身体が柔らかくなる)
  • 急性的な痛みや筋肉痛の軽減

 

参考文献の1つであるMauntelらによるシステマティックレビューでは、筋・筋膜へのアプローチによって関節可動域の向上は見られたが、筋力や筋パフォーマンスの向上は見られなかった、とあります。

システマティックレビュー内のSchroderらによるLiterature Reviewでは、運動後に行うセルフでの筋膜リリースは、可動域や痛み・疲労の改善に効果が “ありそうだ”と、明言は避けています。

 

それではここからもう少し具体的に、筋膜リリースの効果について見ていきます。

 

筋膜リリースによる関節可動域への効果

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まず最初に、上で効果があると言った「関節可動域の向上」についてです。

 

今回の2つの参考文献にはしっかりと、フォームローラーやマッサージスティックのようなツールを用いた筋膜リリースは、関節の可動域を向上させる、とあります。

2015年のシステマティックレビューには、股関節・膝関節・足関節周りにフォームローラーやマッサージスティックを利用し、使用前と使用後のそれぞれの関節の可動域を測定して効果を見た研究が含まれています。

そのすべての研究で、関節の可動域が向上したと報告しています。

 

ここからは、具体的にどのような方法で、どれくらいの時間筋膜リリースが行われ、各関節の可動域が向上したのかを紹介します。

股関節の可動域

股関節屈曲伸展

大腿四頭筋(=前ももの筋肉)にフォームローラーを利用し(1分 × 3セット)、その後股関節伸展(上図を参考に)の可動域を測定しました。結果、可動域の向上が見られた(=有意差あり)と報告されています。

ですが補足として、1週間後にもう一度測定すると可動域は元に戻っていた、という報告もしています。

 

別の研究では、ハムストリング(=後ろのももの筋肉)にフォームローラーを利用し(1分 × 3セット)、更にその後スタティックストレッチ(1分 × 3セット)をして、股関節屈曲(右図参考)の可動域を測定しています。

結果として、フォームロール+スタティックストレッチを組み合わせたことは、フォームロールのみを使用したグループと比較すると、膝関節屈曲の可動域がより向上したと報告しています。 

 

Mikeskyらはハムストリングスにマッサージスティックを使用し(2分間1セットのみ)、股関節屈曲の可動域を測定しました。こちらの結果は、股関節屈曲の可動域の改善は見られなかった、と報告されています。

 

膝関節の可動域

膝間接屈曲伸展

大腿四頭筋にフォームローラーを利用し(1分 × 2セット)、膝の屈曲(右図参照)の可動域が測定されました。

結果、フォームロール前の可動域と比べて、フォームロールをしてから2分後には10°の向上、10分後には8°の向上が見られたということです。 

 

マッサージスティックを使用した研究もここで。

大腿四頭筋とハムストリングにマッサージスティックを利用して筋膜リリースを行い(20秒 × 5セットのグループと、60秒 × 5セットのグループ)、膝関節の可動域を測定しました。

結果、20秒のグループは可動域が約10%向上、60秒のグループは16%以上可動域が向上したと報告されています。

 

足関節の可動域

ふくらはぎにフォームローラーを使用(30秒 × 3セット)し、その後ふくらはぎの静的ストレッチをして、足関節の背屈(右図参照)の可動域が測定されました。

結果は、フォームロールのみ使用の場合は可動域に変化はなし。ストレッチのみの場合は6.2%の可動域の向上。フォームロールをして、その後ストレッチをした場合は9.1%可動域が向上した、と報告されています。

 

この研究をしたSkarabotらは、フォームロールのみではなく、ストレッチと組み合わせることで、可動域の向上の効果を高めると言っています。

しかし、この可動域の向上の効果は10分ほどで消えてしまった、とも報告しています。

 

マッサージスティックを使用した足関節に関する研究もあります。

マッサージスティックによるふくらはぎの筋膜リリース(30秒 × 3セット)とふくらはぎのストレッチ(30秒 × 3セット)による足関節背屈の可動域が測定されました。

結果は「筋膜リリース+ストレッチ」のグループが、すぐ後と10分後それぞれで、一番可動域の向上が見られたとしています。

 

股関節の可動域の研究のところでもありましたが、「筋膜リリースのみ」「ストレッチのみ」よりも、それらを組み合わせた方がより可動域の向上が見られたと報告しています。

 

筋膜リリースは「痛み」を減らす?

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練習・トレーニング後のクールダウンとして筋膜リリースを行った場合、筋肉痛を軽くするような効果はあるのでしょうか?

 

Macdonaldらは、被験者にウエイトトレーニング(バックスクワット:1RMの60%で10回 × 10セット)をやってもらい、その後すぐに20分間のフォームロールによる筋膜リリース(ももの前面・後面・外側・内側)を行わせました。

そして、筋膜リリース後すぐ、24時間後、48時間後、72時間後にそれぞれ痛みレベルを調べ、ウエイトトレーニング後筋膜リリースをしなかったグループと比較しました。

結果は、どの時間ポイントでも、痛みのレベルは筋膜リリースをやったグループの方が低かった、と報告されています。

 

Pearcyらも、2つのグループに強度の高いエクササイズを行わせた後、1つのグループは20分間のフォームロールによる筋膜リリースを行い(股関節周りの主要な筋肉45秒+15秒休憩)、もう1つのグループは何もしないで、それぞれのグループで痛みレベルが測定されました。

結果はMacdonaldらの研究結果と同じく、筋膜リリース後すぐ、24時間後、48時間後、72時間後すべてで痛みのレベルは筋膜リリースを行わなかったグループよりも低くなりました。 

 

運動前の筋膜リリースはパフォーマンスを向上させる?

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2つの参考文献の中では、3つの研究で運動前の筋膜リリースとその後のパフォーマンスの関係が研究されていました。

 

Healeyらの研究では、ダイナミックウォームアップを行った後、1つのグループはフォームロール(大腿四頭筋, ハム, ふくらはぎ, 広背筋, 菱形筋を各30秒)を行い、もう1つのグループはフロントプランク(3分)を行いました。そしていくつかの筋パフォーマンス(筋力・垂直跳び,・シャトルラン)の記録が比較されました。

結果、どの筋パフォーマンスも差はなく、筋膜リリースはパフォーマンスの向上は引き起こさない、と結論づけています。反対に、筋パフォーマンスの向上はなかったけれども、筋パフォーマンスの低下もなかったとも報告しています。

 

Peacockらによる研究でも、フォームロール前後のパフォーマンス(垂直跳び・立ち幅跳び・シャトルラン・ベンチプレス)への影響が調べられましたが、すべてのパフォーマンスで変化は見られなかったと報告されています。

加えて、上のHealeyらと同様に、パフォーマンス低下も見られなかったと結論付けています。

 

Mikeskyらは、フォームロールではなくマッサージスティックを使ってパフォーマンスへの影響を調べています。マッサージスティックの使用前後で垂直跳び・20ヤードダッシュ・股関節伸展の筋力が測定されました。しかし、どれも記録の向上や低下は見られませんでした。

 

まとめ

フォームロールまとめ

WeHeartItより

関節可動域の改善

トレーニング前のウォームアップとしてフォームローラーやマッサージスティック(30秒〜2分を2〜5セット)を使用することは、パフォーマンスレベルを低下させることなく、短時間の柔軟性の向上(股・膝・足関節)の効果はありそうです。

いくつかの研究では、たった1セットの筋膜リリースでも柔軟性は向上したという結果が出ていますが、上にも書いた通り、2〜5セットと数セット行うほうがより確実に関節可動域の向上をもたらすことができるでしょう。

この可動域の改善は、筋膜の粘弾性の変化や、摩擦による血流の増加や筋肉内の温度の上昇、もしくは筋膜リリースによって筋肉の瘢痕組織が壊れるため、などが理由ではないかと考えられています(証明されているわけではない)。

 

ここで1つ。結局時間が経ってしまったら戻ってしまうのなら、たとえ短時間関節の可動域が向上したって意味ないんじゃないか?と思うかもしれませんが、これは要は使い方だと思います。

確かに「体を柔らかくする」というのが目標の人が、ひたすら筋膜リリースだけを行っていても、それはいつまでも目標に達することはないでしょう。筋膜リリースによる関節可動域の向上は、短時間しか続かないですからね。その直後は体が柔らかくなっても、すぐまた硬くなってしまいます。

 

ですが、手術後や怪我からの復帰前だったらどうでしょう。怪我を治すためにその部位をしばらく安静にしていると、どうしてもその部位や周辺が硬くなってしまいます。そんな「かさぶた」のようになっている部分をいきなり動かしてしまえば、そのかさぶたがべりっと取れて、また出血して、また安静にしなければならなくなります。

たとえ10〜20分の関節可動域の向上だとしても、リハビリ前のウォームアップとしては充分です。筋膜リリースによって怪我していた部位の周辺に刺激を与え、可動域を向上させてからリハビリのエクササイズをすることで、かさぶたがべりっとなることを防ぐとともに、効果的なリハビリを行うことができるようになります。

 

痛みの減少・疲労回復効果

激しいトレーニングの後にフォームロールやマッサージスティックを使って筋膜リリースをすることは、その後、それ以上のパフォーマンス低下を防ぐ効果がありそうです。

つまり、翌日にまた激しい練習やトレーニングをするという方は、クールダウンとして筋膜リリースを行って、筋パフォーマンスの低下を防ぐことは、賢い選択肢でしょう。

 

1日20分のフォームロールを3日間続けることで、感じる痛みのレベルをさらに減らすという研究もあるので、筋肉痛がひどくて動けない、というのも筋膜リリースを毎日やることによって防ぐことができるかもしれません。

筋膜リリースによる疲労回復の効果については、フォームロールやマッサージスティックによる刺激が血流を良くし、それによって乳酸の除去や浮腫・水腫の減少、さらには筋肉への酸素の供給を促進することによって引き起こされるだろう、と推測されています。

 

ウォームアップでの筋膜リリース

参考文献の2つのシステマティックレビューの中で、筋膜リリースは筋肉的なパフォーマンスにはネガティブな影響もポジティブな影響もどちらも与えない、と報告しています。

 

これは関節可動域の改善のところでお話ししたこととも関係してきますが、「筋膜リリース後のパフォーマンスは低下しない」ということは重要なポイントです。

筋膜リリースによって関節可動域が向上したとしても、その後のパフォーマンスが重要なわけで、そこでパフォーマンスが低下してしまったら筋膜リリースによって得た関節可動域は全く意味のないものとなってしまいます。

なので「筋膜リリース後のパフォーマンスは低下しない」ということがわかったことで、安心してウォーミングアップの中で筋膜リリースを行って、痛みの感覚を減らしたり、可動域の向上を得ることができます。

 

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