あなたは人生で一回でも腰痛になったことがありますか?おそらく多くの人が「はい」と答えるのではないでしょうか。実際に「世界の60〜85%の人は、人生で1回は腰痛を経験する」とも言われています。

「腰痛」と一言で言っても、実は様々な種類があります。安静にしてても腰が痛いという腰痛。前かがみになった時に痛みがでる腰痛。脚がしびれてくる腰痛。などなど。

今回は、腰痛にはどのような種類があって、それぞれどんな症状が現れるのかを紹介します。あなたの腰痛の症状から、腰痛の原因を推測していきます。


>>参考文献はこちら。

sports-injuries-bookSports Injuries: Diagnosis and Management
スポーツ障害の分野では非常に有名な本です。著者はイギリス人PTのNorrisです。

 

腰痛はちゃんと治ります

まず大前提として、腰痛は他の怪我と同様に、しっかりと治療をすれば治ります。ですが、なぜか「腰痛は一生付き合っていくもの」と考えている人が多いように思います。実際に私が病院で患者さんを診ていても、腰痛持ちの人の多くは「腰なんて痛いのがもはや当然」「大抵の人は腰痛持ちなんでしょ?」という認識のような気がします。

もしあなたが今腰痛持ちなのであれば、ぜひちゃんと向き合って、腰の痛みの原因を探してみましょう。病院で診てもらうのが一番早くて正確ですが、まずはあなたが今持っている症状から、腰痛の種類を推測してみましょう。

腰痛には様々な種類がある

では、腰痛にはどのような種類があるのか、代表的なものを紹介していきます。

【腰痛の種類①】腰椎椎間板ヘルニア

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WeHeartItより

俗に言う「ヘルニア」です。

背骨は24個(頸椎7、胸椎12、腰椎5)の骨から成っていますが、その骨の間には「椎間板(ついかんばん)」と呼ばれるクッションが挟まれています。このクッションのおかげで、重力に抵抗したり、背骨を動かしたり、何か物を持ち上げたりするときに骨にかかる負荷を和らげます。

しかし、度重なる負荷によって椎間板が押しつぶされ続け、椎間板の真ん中にある「髄核(ずいかく)」と呼ばれるものが椎間板を突き抜けて、椎間板の周り(多くは後ろ側)にある組織や神経を圧迫することで、痛みが発生します。椎間板のすぐ後ろには神経が通っているので、後ろに飛び出てしまった髄核がこの神経を圧迫することで、強い痛みや脚にしびれが発生することがあります。

腰の痛みだけでなく、お尻や脚にしびれが発生したら、少し重度の高いヘルニアだと推測されます。

【腰痛の種類②】脊椎管狭窄症

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脊椎官狭窄症(せきついかんきょうさくしょう)は、上記したヘルニアと同じように、背骨の中(=脊柱管)を通っている神経が圧迫されて痛みやしびれが発生するのですが、その圧迫が起こる原因がヘルニアとは異なります。

脊柱管は骨、椎間板、靭帯などで囲まれた長い管で、その中を神経が通っています。加齢などによって、骨が変形したり、靭帯が分厚くなることで、この管が狭くなり、結果として中を通る神経を圧迫してしまうのが、この症状の原因です。よってこの脊柱管狭窄症は、高齢者に多い症状となります。

症状の特徴として「間欠跛行(かんけつはこう)」というものがあります。これは、歩いていると腰や脚に痛みやしびれが出てくるのですが、少し休むと痛みやしびれは和らいでラクになります。ですが、また歩き出してしばらくすると痛くなるというもので、長距離を歩くのに多くの休憩が必要になります。

【腰痛の種類③】腰椎分離症・すべり症

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腰椎分離症とは、腰の骨(=腰椎)の部分的な骨折です。

腰椎の後部(=椎弓 [ついきゅう] と呼ばれる場所)に骨折が起きて、前部の椎体(ついたい)という部分から椎弓が離れてしまう症状を分離症といいます。それに対してすべり症は、分離症がさらに進行して、椎体と椎弓が完全に離れて、椎体が前へずれてしまうという症状をいいます。

分離症は特に中高生のスポーツ選手に多く発生し、症状は軽い腰痛から全く症状のない場合もあります。しかし、治療せずに放っておくとすべり症へと悪化してしまいます。

すべり症は効果的な治療法が少なく、痛みやしびれが強い場合は、手術で緩和させるケースもあるので、分離症の段階で適切な治療をして進行を防ぐことが重要となります。

【腰痛の種類④】急性腰椎症

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俗に言う「ぎっくり腰」です。

重い物を持ち上げたり、ふとした日常生活の動作で腰に激痛が走り動けなくなってしまいます。症状の原因は特定されておらず、腰の靭帯の捻挫、筋肉・筋膜の炎症、などなど様々な原因があると考えられています。

1つ確実なことは、レントゲンでの異常が見られないことです。

【腰痛の種類⑤】腰椎症

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私の経験上ですが、腰椎症と診断された場合は、原因が特定できない腰痛であることが多いです。

レントゲンやMRI検査では異常が発見されないけど腰が痛い。めちゃくちゃ痛いわけじゃないけど、気が付くと痛くて、でも日常生活には特に支障はなくて、、、といった感じ。我慢してれば仕事にも影響がない、というようなケースが多いです。

ただ、腰椎症にもいくつかのパターンがあり、長時間座っていると痛くなる、長時間座ってから動き出すと痛くなる、歩いているときに痛い、歩き出すと痛いけどしばらくすると痛くなくなる、など、症状は人によって様々です。

日常生活にも大きな支障をきたしていないので、我慢している方、完治は諦めている方が多いのも事実ですが、原因を特定できれば良くなるということも経験上多いです。

腰痛の種類を具体的な症状別にチェック

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それでは、腰痛の症状別に、上に挙げた腰痛の種類のうちどの原因が考えられるか、を推測していきます。

注意して欲しいのは、これはあくまで「推測」であるということです。例えば、前屈をして痛みが出る人はまず椎間板ヘルニアが疑われますが、ヘルニアであっても前屈で痛みが出ない人もいれば、後屈で痛みの出るヘルニアの人もいます。

全然痛みがひかない方や、どんどん悪化しているという場合は、すぐに病院(整形外科)で診てもらいましょう。

1)下肢にしびれが出る=①・②・③

「しびれ」は腰痛の原因を診断する上でとても重要な情報であり、腰痛の重度も表します。脚がしびれることがある、という場合は、必ず医師の診察を受けましょう。

2)前屈で痛みやしびれが出る=①・④

もし典型的なヘルニアの場合は、前屈をするとその飛び出した椎間板(髄核)が後方に移動して、神経を圧迫することで痛みやしびれが出ます。

3)後屈で痛みやしびれが出る=②・③・④

もしあなたの年齢が10代であれば、後ろに反った時に腰の痛みが増す場合はまず「腰椎分離症」が疑われるので、すぐ病院(整形外科)に行きましょう。早めの対応・処置で、悪化を防ぐべきです。

4)長時間歩くことができず、少し歩いては休むを繰り返す=②

高齢者に多い症状ということを上記しましたが、若い人でもなってしまうことは十分あります。もしこの症状が出たら、やはり病院で診てもらうことをオススメします。

まとめ

あなたの腰痛の症状に当てはまるものはあったでしょうか?ただ、これはあくまでも目安であり、推測でしかありません。もし「椎間板ヘルニア」「脊椎間狭窄症」「分離・すべり症」の疑いがある場合は、必ず病院で医師の診断を受けましょう。

テレビや雑誌、ネットには様々な形で「ヘルニアにはこの運動が効果的ですよ~」「分離症になったらこのストレッチを毎日やろう!」などと紹介されていますが、私の経験上、一言にヘルニアと言っても、症状や原因が人によって全然違うので、適切な治療というのも人によって異なると思います。

なので、ここではそれぞれの症状に対する対処法は紹介いたしません。あなたの腰痛はすぐにでも医師に診てもらったほうがいいかもしれませんよ、という提起までにしておきます。

追記:2014/9/27】 腰痛症について、新しい記事を書きました。「腰痛の原因は筋肉かも?ストレッチ&筋トレで骨盤の歪みを整える」もぜひご覧ください。

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