熱中症

暑熱馴化の方法|夏の暑さに身体を慣れさせて熱中症を予防する

暑熱馴化(しょねつじゅんか)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?最近の夏は熱中症のニュースが連日放送されていることもあり、聞いたことくらいはある人も多いかもしれません。

暑熱馴化は、簡単に言うと身体を暑さにならすこと。特に運動、スポーツ、部活動などを行う人は、夏の本格的な練習や合宿前に暑熱馴化の期間をつくることは、熱中症になることを予防するためにとても重要です。

でも、身体を暑さに慣らすって、具体的にどうやればいいの?という人が多いと思います。今回は、特に運動・スポーツをする人がどのような順序で夏の暑さに身体を慣れさせていくべきか、具体的な方法をお伝えしたいと思います。


>>今回の参考文献はこちら。

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NATA Consensus Statement:Preseason Heat-Acclimatization Guidelines for Secondary School Athletics
NATAから出ている暑熱馴化に関してまとめられた論文です。

 

暑熱馴化の期間

しっかりと「暑熱馴化の期間」というものをつくることで、暑い中で激しい練習をしても対応できる身体(生理学的な機能の向上・暑さに耐えられる身体・暑い環境でのパフォーマンス低下を抑えるなど)をつくることができます。逆に、暑さにまだ身体が慣れていない状態で、長い時間の練習やハードな練習をすると、熱中症になる危険性がかなり高くなります。

では、具体的にどれくらいの期間を暑熱馴化期間としてとれば良いのでしょうか?

今回のNATA(米国アスレティックトレーナー協会)による参考文献によると、暑熱馴化の期間は14日間とられるべきである、とされています。

この14日間で、徐々に練習時間や強度を増やしていきながら、身体を暑さになれさせて、運動しているときに体内に生まれる熱に耐えられる体にし、またその熱を効率よく体外に出すことのできる体(=汗をかきやすい体)にして、夏に安全にトレーニングができるようにします。

それでは具体的に、どのように14日間で暑熱馴化を行っていけばいいのか。全部で9つのポイントがあります。

1)1〜5日目は、練習は1日1回

よく夏休みや合宿では、午前と午後の2部練をすることがあると思いますが、まだ体が暑さに慣れていない状態で、暑い環境の中でいきなり2部練をすることは、熱中症になる危険性が高いです。最初の5日間は、2部練は控えましょう。

暑熱馴化をはじめてすぐは、汗によって体内の塩分がかなり体外に出ていってしまいます。なので練習中は、電解質を含むドリンクをこまめにとりましょう。

詳しい水分補給の方法は「熱中症予防には水分補給が不可欠!水分補給の方法を具体的に解説!」の記事をお読み下さい。

 

ちなみに、暑熱馴化をはじめて5〜10日で、汗による塩分の損失は減っていきます。カラダが(このまま塩分をどんどん失っていってはマズい。なるべく汗と一緒に塩分を出さないようにしよう)と、夏に順応しはじめるのです。カラダってすごい!なので、1〜5日目は特に気をつけて水分補給を行いましょう。

2)1〜5日目は、1日の練習のトータル時間は3時間以内におさめる

紫外線を長時間浴びることは、特に運動とかをしていなくても、それだけで体を疲れさせます。なので、最初の5日間は、練習は3時間以内におさめましょう。

もし練習の途中で天気が悪くなったり暑すぎる場合は、無理に練習は続けずに1度やめ、天気がよくなってから、もしくは少し涼しくなってから練習を再開しましょう。ただし、練習を1度やめたとしても、1日のトータルの練習時間は3時間を超えないようにしましょう。

3)最初の2日間は、安全のためのヘルメット以外の装備品は身につけない

暑熱馴化をはじめてすぐの1日目と2日目は、なるべく身軽な格好(Tシャツにハーフパンツなど)で練習を行います。アメフトのショルダーパッドや、野球のキャッチャーのマスク・防具などはまだ身につけずに練習をしましょう(=身につけなくてもできる安全な練習を行いましょう)。

そして、暑熱馴化期間が進むにつれて、徐々にフル装備にしていきます。装備品は、体内の熱を体外に放出させづらくしますからね(汗をかいても、それが気化熱として蒸発しない)。体を少しずつ暑さにならすためです。

3〜5日目から、ヘルメットとショルダーパッド(アメフトの場合)を装着して練習してもオッケー。6日目から、フル装備での練習をスタートしましょう。

4)1〜5日目の中で、1日だけ1.5部練の日を設けても良い

1.5部練とは、2部練の形はとるけれど、どちらかの練習は最大1時間の軽めの練習をする、ということ。たとえば、午前は普通に練習(トータル3時間以内)をして、午後は軽めの練習(1時間以内)をする、ということです。なお、この軽めの練習は、装備品なしで行いましょう。ちなみに、別に1.5部練の日は無理に設ける必要はありません。

そして、午前と午後の練習の間の休憩は、3時間以上はとるようにしましょう。これは、疲労回復はもちろん、お昼の食事がしっかり消化・吸収される時間を与えることも目的です。

5)6日目から2部練を開始しても良い

4)でも言いましたが、2部練をする場合は、練習間の休憩は必ず3時間以上はあけるようにしましょう。2部練はかなりの体力を使うことになるでしょう。よって、熱中症になるリスクは上がります。無理はせず(指導者はさせず)、練習中の休憩もしっかりと取りながらの2部練にしてください。

また、こちらも無理して2部練を行う必要はありません。6日目からもそのまま1日1回の練習でも充分です。

6)2部練をした次の日は必ず1部練(or 休み)にする

もし2部練をした場合は、基本的には次の日は必ず1部練にしましょう。もし選手たちに疲労が見えなければ、④で説明した軽めの練習(最大1時間)を含めた1.5部練ならやってもオッケーです。もし2部練の次の日を1日休みにしたのであれば、その休みの次の日は2部練をやってもオッケーです。

更に、もし6日間連続で練習をしたら、次の日は必ず1日休みにしましょう。(7日間連続で練習をするべきではありません)

7)2部練をする場合、どちらの練習も3時間を超えるべきではない

2部練を行う場合は、1回の練習が3時間を超えないようにしましょう。一度に長く練習を続けることは、熱中症のリスクを高めます。

8)2部練のトータルで5時間を超えるべきではない

7)と関連して、2部練の練習時間をトータルした時に5時間を超えないようにしましょう。

また、ここまでずっと練習時間について話してきましたが、この練習時間というのは、ウォームアップやクールダウン(ストレッチも含む)・ウエイトトレーニング(筋トレ)などもすベて含んだ時間の長さです。さらに、ここまで何度も言ってきていますが、練習間の休憩は涼しい場所で3時間以上はとりましょう。

9)暑熱馴化期間中は、できればトレーナーを常駐させる

暑熱馴化をしているこの14日間は、熱中症になる危険性がとても高いです。体が暑さになれていない期間ですからね。なにかあったときに素早く正確な対応ができるアスレティックトレーナーなどの専門家がいると、とても心強いと思います。

まとめ

以上が、14日間で身体を暑さにならし、カラダを夏仕様にする9つのキーポイントです。なお、もしこの14日間の暑熱馴化の期間中に、ケガや病気などで練習を休んだ場合、その休んだ日数はこの14日間にカウントしません。

たとえば、4日目の練習中にケガをしてしまって、その日と次の日は練習をしなかったとします。すると、チームのみんなは暑熱馴化6日目になり、もしかしたら2部練を開始するかもしれません。ですが、このケガをした選手は4日目と5日目は休んでいるので、この選手は暑熱馴化4日目として練習をします。つまり、この選手はまだ2部練はするべきではありません。

暑い夏。安全に、効率的に、充実した練習をするためにも、しっかり暑熱馴化の期間をつくって、暑い夏を乗り切りましょう!

CHAINON管理人

EXOS8のコピーATSUSHI(山口淳士)。米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)。外資系企業内のフィットネスセンターで健康指導・運動指導を行う。その他、ストレッチポール公式ブログでの記事監修や、GAP英語勉強会の講師なども。

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