アイシング

部位毎のアイシングの時間の目安|アイシングは何分やるのが効果的?

アイシング_氷のう

アイシング(クライオセラピーとも言います)は、どこか怪我をしたときに行う最初のケアとして、様々な場所で使われています。適切な時間(=長さ)で怪我をした部位を冷やすことで、その怪我の被害を最小限に防ぐことができます。

ですが、アイシングの研究は数多くされているにもかかわらず、怪我を最小限に防いだり治癒を早めるために「アイシングは何分やればいい!」とはっきり断言はされていません。

というのには理由があります。これは「アイシングをするベストな時間の長さは、そのアイシングをする部位によって違う」からです。指と太ももでは冷えるスピードが違いますし、脂肪が全然ない人とある人でも冷えるスピードは変わるのです。

「アイシングって、何分やればいいの?」という疑問に答えていきたいと思います。


>>参考文献はこちらです。

アイシング_時間_スクショ

Skinfold Thickness at 8 Common Cryotherapy Sites in Various Athletic Populations
よくアイシングが行われる8つの部位の脂肪組織の厚さを調べて、それぞれの部位に適したアイシングの長さを調べた研究です。被験者の数が389人と、比較的大規模な研究です。

アイシング_脂肪_時間_スクショ_Otte

Subcutaneous adipose tissue thickness alters cooling time during cryotherapy
脂肪の厚さとアイシングの効果について研究された、とても有名な2002年の論文です。多くの研究で参考文献として掲載されています。

アイシングはなぜやるべき?アイシングの効果

手首_アイシング_怪我

怪我をしてしまった後すぐにアイシングをすることで、以下のような効果が期待されます。

  • 腫れを最小限に抑える・減らす
  • 痛みを最小限に抑える・減らす
  • 筋肉の拘縮(=スパズム)を減らす
  • 二次的低酸素障害を予防する

アイシングはこれらの効果があると言われているため、怪我を最小限に抑えることに繋がります。アイシングの効果について、詳しくは「怪我の応急処置にはPRICEがベスト|適切な処置で最短の復帰を」の中で解説しています。ぜひこちらもお読みください。

【二次的低酸素障害とは?】 怪我をすると、その部位の血管が損傷して、出血します。血管が損傷しているため、その血管がつながる先の部位には新しい血液がうまく運ばれなくなってしまいます。また、出血による腫れによって、その怪我をした部位の周辺にも栄養や酸素がうまく行き届かなくなってしまうことがあります。その部位を怪我したわけではないにも関わらず、栄養や酸素が行き届かずに、無傷だったはずの部位まで損傷してしまう(=細胞が死んでしまう)ことを、二次的低酸素障害と言います。

アイシングの時間の長さは脂肪の厚さによって変える

脂肪_厚さ_アイシング_時間

よく「アイシングは20分するべき!」といったようなことを聞きます。アイシングをしたことがある方であれば、一度は、アイシングは「15分」とか「20分」といった数字を聞いたことがあるかもしれません。ですがこの数字、実は根拠がある数字ではありません

今回の参考文献では、皮下脂肪の厚さによって、その下にある組織(=今回の文献では筋肉内の温度)の冷えるスピードが変わる、ということを研究によって証明しました。つまり、皮下脂肪が厚い人、もしくは皮下脂肪が厚い部位であればあるほど、その下(=深層)にある組織をしっかり冷やすためには長い時間が必要になる、ということです

ある2人が同じ部位をアイシングするとしても、脂肪が少ない人と多い人では、同じアイシングの効果を得るためにはアイシングをする時間の長さを変えなければいけないのです。

1)アイシングで筋肉を7℃下げるのに何分かかる?

アイシング_腰_時間

今回の参考文献の1つでは、脂肪の厚さによって4つのグループに分け、全員が前もものアイシングを行いました。そして、そのアイシングを行なっている前ももの筋肉の温度が7℃下がるまでに何分くらいの時間がかかるか、という実験が行われました。

分けられたグループは、脂肪の厚さが「0〜10mm」「11〜20mm」「21〜30mm」「31〜40mm」の4グループ。それぞれのグループにおいて、前ももの筋肉が7℃下がるまでにかかった時間は、以下の通り。

  • 0〜10mmグループ:8.0 ± 3.4 分
  • 11〜20mm:23.3 ± 6.7 分
  • 21〜30mm:37.8 ± 9.6 分
  • 31〜40mm:58.6 ± 11.7 分

前ももの筋肉の温度が7℃下がるのに費やした時間は、皮下脂肪の厚さが0〜10mmの人たちはたった約8分だったのに対して、31〜40mmの人たちは約58分もかかっています。この結果を見るだけでも、すべての人が、どの筋肉をアイシングするときも同じ時間行う、ということがどれだけナンセンスかわかるかと思います。

2)アイシングを20分やったら何度下がる?

同じ研究ではさらに、それぞれのグループがアイシングを20分行なった時にどれくらい温度が下がるのか、というのも検証しています。結果はこちら。

  • 0〜10mmグループ:−7℃(8分で終了)
  • 11〜20mm:−5.23℃
  • 21〜30mm:−3.97℃
  • 31〜40mm:−1.79℃

皮下脂肪が31〜40mmの人たちは、アイシングを20分行なっても筋肉の温度は2℃も下がりませんでした。逆に、皮下脂肪0〜10mmの人たちは、アイシング開始から8分たったところでもう7℃も温度が下がりました。

アイシングによって何度温度を下げることが理想的か、というのはまだ研究でも明らかになっていません。よって今回の研究で設定された「7℃」という数字も、ベストかどうかはわかりません。ですが、筋肉の温度が2℃しか下がらないことと、7℃下がることは、やはりアイシングの効果としては変わってくる気がします。よって、アイシングをより効果的に行うために「皮下脂肪の厚さ」はちゃんと気にした方が良さそうです。

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アイシング時間部位別まとめ

Otteらの研究による「筋肉の温度が7℃下がるまでにかかる時間」と、Jutteらの研究による「性別」「普段の運動レベル」で比較した部位ごとの脂肪の厚さをもとに、部位別にアイシングの時間の長さの目安がまとめられているので、紹介します。

部位活動レベル性別アイシング時間の目安
肩甲骨一般・アスリート男・女25分
肩(三角筋)アスリート男・女25分
 一般25分
  40分
一般・アスリート男・女15分
前腕一般・アスリート男・女15分
ももアスリート男・女25分
 一般25分
  40分
膝(内側)アスリート男・女25分
 一般25分
  40分
ふくらはぎアスリート15分
  25分
 一般男・女25分
足首(外くるぶし付近)一般・アスリート男・女15分

表を見てもらうとわかるように、ある部位は15分で充分ですが、ある部位では40分行わないとしっかり冷えないという事がわかります。「20分」という数字はこれらを平均した時間の長さなのかもしれませんが、20分という時間は、ある部位にとっては短すぎるし、ある部位にとっては長すぎる可能性もあるのです。

脂肪の厚さを意識してアイシングをしましょう。トレーナーであれば、脂肪の厚さを意識して、時間の長さの指示を与えましょう)。

【注意!】いくら筋肉の温度を下げたいからといって、皮膚が凍傷になってしまったら全く意味がありません。アイシングを行うと、「(1)冷たい」→「(2)痛い」→「(3)温かい or 熱い」→「(4)チクチク・ピリピリ」→「(5)麻痺」の順番で、感覚が変わっていきます。この(5)の麻痺を通り越して再び痛みが出てきたら、それはやりすぎです。凍傷になる可能性があるため、すぐにアイシングをやめましょう。

アイシングのために脂肪の厚さを測ってる時間はない

アイシング_脂肪_時間

とは言っても、トレーナーが現場で1人1人の脂肪の厚さを測定するのは現実的ではない、という方も多くいると思います。道具が必要だし、そんな時間や環境がないかもしれません。よって、脂肪の厚さを測定せずに、ある程度推測できるデータをいくつか紹介します。

1)男性よりも総じて女性の方が脂肪の厚さがある

今回の参考文献の研究では、男性と女性ともに被験者となり、8つの部位(肩甲骨周辺・肩・肘・前腕・もも・膝・ふくらはぎ・足首)の脂肪の厚さが測定されました。

結果として、アスリートと一般人どちらでも、男性と比較すると女性の方が脂肪の厚さがあることがわかりました。これはつまり、同じ部位をアイシングして同じ効果(=同じ温度を下げる)を得るのであれば、女性の方が若干時間がかかるということになります。

ただ、これはもちろん人によって違います。あくまで「一般的に女性の方が脂肪が厚い傾向にある」ということだけ頭に入れておくと良いかと思います。

2)普段の運動量が多いほど脂肪の厚さは少ない

この研究では、「男性」と「女性」の比較に加えて、「大学生アスリート(Division I=トップレベル)」と「一般大学生(体育の授業に週2回出ている)」も比較されました。

結果、肩・肘・足首以外のすべての部位で、一般大学生の方が脂肪が厚い、ということがわかりました(肩・肘・足首は、統計的な有意差がなかったようです)。もちろんこれも個人差はありますが、「普段運動をあまりしていない人は皮下脂肪が少し多いかもな」ということは頭に入れておくと、アイシングの時間を決める参考になるかもしれませんね。

上記しましたが、どこの部位をアイシングするとしても「アイシングは20分!」などと決めつけることは、アイシングの効果を最大限に引き出していない可能性があります。アイシングの時間が短すぎると、怪我をした部位の温度を下げることで炎症や血流を抑えるなどの効果を狙っているのに、温度が下がりきる前にアイシングをやめてしまっているかもしれません。

まとめ

皮下脂肪の厚さがあればあるほど、その下にある筋肉の温度は下がりづらくなります。すべての人が、アイシングによって筋肉の温度を同じように下げようと思ったら、皮下脂肪が厚い人ほど長い時間アイシングをする必要があります。

少しでも効果的なアイシングを行うことができるように、参考にしていただけたらと思います。

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CHAINON管理人

EXOS8のコピーATSUSHI(山口淳士)。米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)。外資系企業内のフィットネスセンターで健康指導・運動指導を行う。その他、ストレッチポール公式ブログでの記事監修や、GAP英語勉強会の講師なども。

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>>共同執筆者Sakuのプロフィールはこちら

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