メタボリックシンドローム(通称:メタボ)は、正式にどのような人が診断されるのかご存知ですか?ただ太っている人のことを言うわけではありません。

メタボになることがなぜ良くないかと言うと、病気になるリスクが上がるから。ですが、メタボは生活習慣病と言われているので、生活習慣を見直すことでちゃんと改善することができます。

今回の記事ではまず、どういう人がメタボと診断されるのかを解説します。そして、メタボの改善方法もお伝えします。


>>参考にした文献はこちらです。

  1. 肥満症診療ガイドライン2016|日本肥満学会 編集
    日本肥満学会が2016年に発表したガイドラインです。各章ごとの文献の数がとても豊富で、信頼できる本だと思います。

メタボリックシンドロームの診断基準

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私ってメタボなの?メタボじゃないの?というあなた。以下の1)と2)の両方に当てはまったらメタボです。

1)ウエスト周囲長 = 男性:85cm以上 ; 女性:90cm以上

2)以下の3つのうち、2つ以上当てはまる

A)脂質異常:トリグリセライド値が150mg/dL以上、もしくは HDL-C値が40mg/dL以下(男女とも)

B)高血圧:収縮期血圧が130mmHg以上、もしくは 拡張期血圧が85mmHg以上

C)高血糖:空腹時の血糖値が110mg/dL以上

色々難しい言葉や数字が並んでいますが、1)のウエスト周囲長の条件が当てはまる人は、一度健康診断を受けて「脂質異常」「高血圧」「高血糖」が当てはまらないかどうか診断してもらいましょう。

早めに知って対処することで、未然に大きな病気を防ぐことができます。

メタボ診断のためのウエスト周囲長の測り方

メタボリックシンドロームの診断基準としての必須項目が「ウエスト周囲長」です。この長さが大きければ大きいほど、内臓脂肪が多いと判断されます。

測り方は簡単で、上の写真のように「おへその高さ」で長さを測定します(上の写真ではメジャーが斜めになっていますが、ちゃんと高さをそろえて測りましょう)。

測定の際は、両足をぴったり揃えて立った状態で行います。腕はリラックスして両側に下げておき、自然に呼吸しましょう。呼吸を止めたり、お腹をわざと凹ませて測定するのは、正確な値ではありません。

メジャーがお腹に食い込まないように、優しくお腹周りをまわします。食事の後に測定するのも正確な値ではないので、食事の前(=空腹時)に測るようにしましょう。

なぜメタボ診断でウエストの長さを測るの?

ウエストを測定することで「内臓脂肪がどれくらいあるか?」を推定しています。

内臓脂肪の面積が100cm2以上であると、正式にメタボであると診断されるのですが、内臓脂肪の正確な面積は、病院へ行ってCTスキャン(レントゲンのようなもの)を使って測定しなければわかりません。

よって、CTスキャンよりは正確ではないですが、ウエスト周りの長さを測定することで、簡単にメタボリックシンドロームの可能性があるかどうかをチェックすることができます。

ウエスト周囲長は、あくまでメタボの可能性を示唆するものです。男性でウエストが85cm以上あっても、それに加えて、血糖・血圧・脂質の異常が2つ以上当てはまってはじめて正式に「メタボ」と診断されます。

メタボと診断されると何がよくない?

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もしあなたが「メタボである」と診断された場合、あなたは心血管系の病気にかかるリスクがとても高い状態である、と言えます

単純にメタボリックシンドロームと診断された人とそうでない人を比較した時、メタボの人が心血管系の病気になる確率は約2倍だったという研究(システマティック・レビュー)があります。

心血管系の病気とは、簡単に言うと「血管の病気」です。血管が詰まったり、血管が膨らんで破れて出血してしまったりするもの。

病名で言うと「脳出血(脳内の血管が破れて出血)」「脳梗塞(脳の血管が詰まる)」「心筋梗塞(心臓の血管が詰まる)」「胸部や腹部の大動脈瘤(血管が膨らむ)」などが挙げられます。怖いですね。。。

メタボと診断されたら?メタボを改善するために

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メタボリックシンドロームと診断される人は、男性だと30代、女性は40代から、歳をとると共に増えています。男性は特に、40〜74歳だと2人に1人はメタボだと言われています。

よって、できるだけ早いうちから(できれば20代のうちから)メタボにならないよう予防しておくべきです。メタボの予防は、心血管系の病気の予防になります。

また、たとえメタボであると診断されてしまったとしても、早いうちから改善のために動き出すことで、重症になったり合併症になることを防ぐことができます。

メタボ改善の第一歩は「体重」と「内臓脂肪」の減少

メタボと診断されたら、「食事」と「運動」によって生活習慣を改善し、体重と内臓脂肪を減らすことがまず第一の目標になります。

約3,500人の特定保健指導を受けた人を対象に行った研究によると、体重のたった1〜3%の減量によって、脂質異常や肝機能の改善がみられ、さらに減量して3〜5%の体重が減ると、血圧の低下・血糖値減少・尿酸値改善など、様々な健康障害の改善に良い影響を与えることが研究で証明されています。

今回の参考文献である日本肥満学会のガイドラインでは、メタボリックシンドロームの治療目標として以下のようにあげています。

「現在の体重から3〜6ヶ月で3%以上減少」

高度肥満では「現在の体重から3〜6ヶ月で5〜10%減少」

1)メタボ改善にはまず「食事」を見直す

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体重と内臓脂肪を減らすための方法として、まず何よりもやるべきなのが「1日の食事量の見直し」です。

肥満症診療ガイドライン2016には「食事による摂取エネルギーを制限すること」がもっとも有効で確立された方法である、と断言しており、エビデンスレベルも一番高いLevel1となっています。

肥満症診療ガイドライン2016でのLevel1というのは「ランダム化試験や大規模疫学調査、メタアナリシスに基づくデータがある」となっており、これはつまり、信頼できるエビデンスによって確立されている、ということを示しています。

では、どれくらい摂取エネルギーを制限すれば良いのでしょうか。内臓脂肪を減らしていくための、一日の摂取エネルギーの目安を紹介します。

A)BMIが25以上35未満の人の場合

BMIが25以上35未満の人は、一日に「25kcal × あなたの標準体重」以下のカロリーを摂取することを目標にします。

ここでまず疑問となるのが「あなたの標準体重」ですが、これは簡単に計算で求めることができます(BMIって何よ?という方は、「BMIで肥満度を計測する|肥満は様々な健康障害を引き起こす」の記事をご覧ください)。

あなたの標準体重は以下の式で求めることができます。

あなたの標準体重=22 ✕(身長【m】)✕(身長【m】)

「標準体重」は「BMI =22」になる体重です。つまり、上の式の「22」はBMIを示しています。その22に、あなたの身長(メートルに直す)を2回掛けて出た数値が、あなたの標準体重です。

もしあなたの身長が170cmだったら、『22× 1.7 × 1.7 =63.58』となるため、身長170cmに人の標準体重は63〜64キロである、となります。

よって、身長170cmの人の1日の摂取カロリー目標は「25 (kcal) × 64 (kg) =1600kcal」以下、となります。

摂取カロリー以下であれば何でも食べていいというわけではなく、もちろん食べるものの質も大事になってきます。

B)BMIが35以上の人の場合

BMIが35以上の人は「高度肥満症」と言われます。ここに当てはまる人は「20〜25kcal × あなたの標準体重」以下が一日の摂取カロリーの目安となります。

A)のBMI=25〜35の人よりも、摂取カロリーが少なく設定されているのがわかりますね。

各栄養素のバランスは?

脂肪症診療ガイドライン2016には、一日の摂取カロリーの「50〜60%を炭水化物」「15〜20%をタンパク質」「20〜25%を脂質」とするのが一般的である、と示しています。

上記した摂取カロリーのバランスについてはエビデンスレベルLevel3(=専門家の合意・コンセンサス、あるいは標準的治療)となっており、これはつまり、しっかりとしたエビデンスはないから参考程度に、くらいのレベルであることを示しています。

メタボは食事で治す|目標摂取カロリーの決め方と4つの食事ルール」という記事を書きました。ぜひお読み下さい。

2)メタボを改善するための運動

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食事に加えて「運動」も、体重を減らすことと肥満の予防に有効な手段となります。

運動を行うことで、たとえ体重が3%減らなかったとしても、肥満に関連がある健康障害の指標(血糖値や血圧)は改善することがわかっています。

運動(身体活動)をすることでエネルギー消費量が増えるため、減量の効果があります。上記した食事で摂取カロリーを減らし、運動によって消費エネルギーを増やすことで、より効率的に体重を減らしていくことができます。

摂取エネルギーについては詳しく「推定エネルギー必要量を求めて一日に必要なエネルギー量を計算!」の記事で書いているので、よかったら読んでみてください。

運動を始める前に一度医師に確認を!

以前動脈硬化になったことがある方や、耐糖能障害・高血圧・脂質異常症とすでに診断されている方は、万が一怒るかもしれない運動中の心血管系の事故を防ぐためにも、一度病院へ行って、どれくらいの運動であれば安全に行えるのかを確認しましょう。

まとめ

メタボリックシンドロームというのは、ただ太っている人のことを言うのではなく、健康障害になるリスクが高い状態の人のことを言います。

正確な診断は病院に行って検査をしてもらう必要がありますが、(ちょっとお腹が出てきたな。。。)と感じる人は、まずはウエストを測ってみましょう。

メタボは生活習慣の見直し(特に「食事」と「運動」)でちゃんと改善します。

健康障害になってしまう前に、もしくは健康障害の数をこれ以上増やしたり悪化させたりしないためにも、ぜひ今日から対策を始めましょう。

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