リハビリ

前十字靭帯を断裂してから手術までにやっておきたい「術前リハビリ」8選

前十字靭帯術前リハビリエクササイズ1

前十字靭帯の断裂は、スポーツ中によく起こってしまう怪我であるとともに、完全復帰までとても時間がかかってしまう怪我の1つです。そして、高いレベルで運動やスポーツを再び行いたい場合は、多くの場合医師から「手術」をすることが勧められます。

怪我をしてしまうと、ショックで何もしたくなくなってしまったり、どうせ手術をするからと、手術の日まで何もしないでいいや、と考える方もいるかもしれません。ですが、それは大きな間違いです。

手術を終えてからのリハビリはもちろん大事ですが、それと同じくらい「手術前に行うリハビリ」も、早期回復のためにはすごく重要になります。

Eitzenらによる研究によれば、手術前の段階で大腿四頭筋(前もも)の筋力が、怪我をしていない脚の筋力とくらべて20%以上劣っている場合、手術をしてから2年後になっても手術をした脚の筋力は、健康な脚の筋力まで戻らなかった、と示しています。左右の筋力のアンバランスは、再び怪我をしてしまうリスクを上げてしまうかもしれません。

今回は、高いレベルでの運動・スポーツへの早期回復・復帰を目指すために、前十字靭帯断裂の手術を受ける前にやっておくと良い「術前リハビリ」のエクササイズを厳選して8個紹介します。


>>今回の参考文献はこちらです。

ACL_PreOp研究スクショ1Effects of 4 weeks preoperative exercise on knee extensor strength after anterior cruciate ligament reconstruction」 手術前に4週間のリハビリエクササイズをするかしないかで、膝を伸ばす筋肉(膝伸展筋)の筋力にどれくらいの差が出るか、を研究した論文です。

ACL_PreOp2研究スクショPreoperative quadriceps strength is a significant predictor of knee function two years after anterior cruciate ligament reconstruction」 Eitzenらによる「手術前の大腿四頭筋の筋力は、手術2年後の膝の機能を決定する重要なファクター(予測因子)である」というタイトルの論文です。

不適切なケア・リハビリは大腿四頭筋の筋力低下を招く

前十字靭帯ACLリハビリ

前十字靭帯の手術後によく起こる欠陥の1つが「大腿四頭筋(膝を伸ばす筋肉)の筋力低下」です。膝関節に関わる筋肉の中でも強力な筋肉の1つである大腿四頭筋の筋力低下は、膝関節自体の機能低下や不安定性を生み出してしまうため、再び高いレベルでの運動・スポーツを開始したときに、再受傷のリスクがとても高くなってしまいます。

Palmier-Smithらの研究によれば、多くの選手・患者が、前十字靭帯の再建手術をしてから6〜12ヶ月経ってからも、怪我をしていない脚の筋力と比べると、手術をした脚の筋力は10〜40.5%もの筋力低下が見られた、と示しています。手術前、手術後の適切なケア・リハビリはとても重要なのです。

手術前に達成しておきたい5つのポイント

手術を終えてからのケア・リハビリをしっかり行うことは、大腿四頭筋をはじめとした膝関節に関わる筋肉の筋力を回復させるために重要なのは間違いありません。ですが、より早く脚の状態を怪我する前のレベルに戻し、早期復帰を目指すためには、手術前からもうリハビリは始まっている、と考えましょう。

以下に挙げた5つのポイントをクリアしてから手術を行うことで、手術後の筋力回復や可動域の改善が早まる可能性があります。

  • 痛みと腫れをなくす
  • 怪我をしていない側の膝と同じ可動域(膝伸展&屈曲)
  • 普通に歩くことができる(かばっていない)
  • 膝関節周囲の筋力の維持
  • 筋萎縮の予防(筋肉をなるべく細くしない)

前十字靭帯を断裂してしまった方は、手術の日を迎えるまで、上記した5つのポイントをクリアすることを目標に、無理はせずに術前リハビリを行ってみてください。

リハビリをしたあとはPRICE処置を

アイシング_膝_PRICE

手術前、手術後に関わらず、リハビリエクササイズをした後は必ずアイシングを含めたPRICE処置を行いましょう。炎症や腫れを最小限にとどめたり、痛みを抑えたりと、様々なメリットがあります。詳しくは「怪我の応急処置にはPRICEがベスト|適切な処置で最短の復帰を」の記事をお読みください。

アイシングは「ただ氷で冷やせばいい」というわけではありません。やり方次第では、アイシングの効果を最大限に得ることができません。「アイシングカテゴリー」ページに、アイシングをより効果的に行うための記事がいくつかあるので、もし興味があればぜひこちらもお読みください。

おすすめの術前リハビリエクササイズ8選

それでは、怪我をしてから前十字靭帯を修復する手術の日を迎えるまでにやっておくと良いオススメリハビリエクササイズを8個紹介します。全部英語ですが、動きを見ればどんなエクササイズなのかわかるはずです。

1)Ankle Pump(アンクルポンプ)

足首を大きく動かすことによって、膝下の筋肉(ふくらはぎ・すね)を鍛えるとともに、血流を良くして膝の腫れを引かせる効果もあるエクササイズです。

  1. ストレッチポールやフォームローラーの上に足首を乗せたり、枕や掛け布団などの上に脚を乗せるなどして、足を少し挙上します(腫れを引かせるのが目的です)。
  2. つま先をできるだけ大きく前後に動かすようにして(=足関節の最大可動域で)、足首の曲げ伸ばしをします。

30回を1セットとし、3セットほど行いましょう。無理は禁物ですが、腫れがあるうちは、暇さえあれば足首を動かしておく、くらいに思っていても良いでしょう。上記しましたが、手術前に達成したいことの1つは「腫れを引かせる」です。

2)Quad Sets(クワッドセット)

大腿四頭筋(前もも)の筋力をつけるとともに、膝関節をしっかり伸ばすことができるようになるためのエクササイズです。膝の怪我のリハビリエクササイズとして有名なエクササイズの1つです。

  1. 膝下にタオルを置き、仰向けになります。
  2. 膝裏でタオルを床に押し付けるようにして前ももに力を入れます。
  3. 前ももに力をいれたまま3〜5秒ほどキープします。
  4. ゆっくり力を抜いてリラックスします。

15〜20回行ったら1分ほど休憩し、3セット繰り返します。1回1回しっかりと前ももを収縮させ、膝を伸ばすことが大切なので、そこを意識して行いましょう。

3)Straight Leg Raise(ストレートレッグレイズ)

大腿四頭筋・股関節屈筋群(腸腰筋など)を鍛えるエクササイズです。こちらも膝の怪我のリハビリエクササイズとしてよく使われるものの1つです。

  1. 仰向けになり、怪我をしていない方の膝を曲げて立てます。
  2. つま先をすねの方に引き上げます。
  3. 前ももに力を入れて膝をしっかり伸ばした状態で、ゆっくり脚を持ち上げます。
  4. 地面から30cm〜逆脚のももと並ぶ位置ほどまで持ち上げたところで2〜3秒キープします。
  5. ゆっくり地面に下ろし、一度力を抜きます。

10〜15回ほど行ったら1分休憩し、2〜3セット繰り返します。

ポイントは2つ。1つ目は「前ももにしっかりと力を入れてから脚を持ち上げる」こと。これをやらずに何も考えずにただ脚の上げ下げをしていては効果が半減します。

2つ目のポイントは「脚を床に下ろしたら一度全部力を抜く」こと。力を入れたり抜いたりすることで、筋肉がポンプの機能を果たし、血流が良くなることで腫れを引かせることにもつながります。

動きは同じでも、ポイントを抑えて1回1回を丁寧にやることで効果がすごく変わってきます。慣れてきたら下のようなウエイトを足首に巻いて行うのも良いですね。

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4)Towel Heel Slides(タオルを使ったヒールスライド)

膝を曲げる可動域(=膝屈曲)を広げるエクササイズです。手術の日までに、怪我をしていない側の膝と同じくらい曲げられるようになるのが目標です。

  1. 長座になり、かかとにタオルを引っ掛けて、タオルの両端を両手で持ちます。
  2. まずは自分の力で(もも裏の筋肉を使って)膝を曲げて、かかとを手前にスライドさせてきます。
  3. 筋力ではもうこれ以上曲がらないというところまできたら、脚の力を抜いて、ゆっくりタオルを手前に引き、さらに膝を曲げていきます(無理はしない)。
  4. 一番膝を曲げた所で5秒キープし、ゆっくり膝を伸ばしていきます。

15〜20回を1セットとし、1分ほどの休憩を挟んで3セット行います。

最初からタオルを引っ張るのではなく、最初は「もも裏(=ハムストリング)の筋力を使って曲げていく」ことがポイントです。ただ膝を曲げられるようにするだけのエクササイズではなく、ハムの筋肉をつけるエクササイズでもあるのです。

5)Short Arc Extension(ショートアーク・エクステンション)

前もも(=大腿四頭筋)の筋力を鍛えるエクササイズです。

  1. 膝下にストレッチポールやフォームローラー、もしくは丸めたバスタオルなどを置いて仰向けになります。
  2. 前ももに力を入れて、ゆっくり膝を伸ばして足を持ち上げます。
  3. しっかり膝を伸ばした状態(=足を持ち上げた状態)で3秒ほどキープします。
  4. ゆっくり膝を曲げて足を下ろします。

10〜15回ほど1セットとし、3セット行います。特に「ゆっくり膝を曲げて足を下ろす」ところが大事です。

6)Hip Abduction(ヒップアブダクション)

臀筋群(中臀筋・大臀筋)を鍛えるエクササイズです。「歩くこと」や「片脚で体をしっかり保持すること」にとても重要なのがおしりの筋肉です。また、運動・スポーツ中に膝が内側に入ってしまう(=内股になる)クセのある人は、臀筋群がしっかりと働いていない可能性があります。ぜひリハビリに臀筋群のエクササイズを加えましょう。

  1. 壁から10cmほど離れた所で横向きになります。
  2. 腰を反らないように注意しながら、天井側の足のかかとを壁につけます(靴下をはいて行うと、壁をスライドさせやすくなります)。
  3. つま先を少しだけ天井に向けます(動画では逆に下向きになっていますが、私個人的には上向きにしたほうが臀筋群にしっかりと効かせられると思います)。
  4. かかとで壁を押しながら、ゆっくり上にかかとをスライドさせて持ち上げます。
  5. 30〜40度ほど持ち上げたら、壁は引き続き押しながらゆっくり下げていきます。

ヒップアブダクションは色々なやり方が紹介されていますが、私はこの壁を使って行う方法が一番臀筋群に効くと感じています。「しっかりと壁を押しながら脚の上げ下げをする」ことがポイントです。

7)Terminal Knee Extension(ターミナル・ニーエクステンション)

前十字靭帯断裂の早期回復を妨げる要因の1つとして「膝がまっすぐ伸びなくなってしまう」というものが挙げられます。よって、手術前・手術後ともに「膝関節の伸展(膝を伸ばす動き)」がしっかりとできるようにリハビリを進めていく必要があるのですが、その膝を伸ばす動きをよくするエクササイズがこの「ターミナル・ニーエクステンション」です。

※強度の弱いチューブなどがもしあれば使って行いましょう。なければ(もしくは強度的にキツければ)チューブなしで行ってください。チューブなしでもとても良いエクササイズです。

  1. チューブをどこか動かない場所に引っ掛け、逆側に脚を通して膝裏まで持っていきます。
  2. 膝を軽く曲げたところから、チューブを後ろに引っ張るようにして膝を伸ばしていきます。
  3. 膝を伸ばした状態で3秒ほどキープし、ゆっくり膝を曲げて戻ります。

15〜20回ほど行って1分ほど休憩を3セット繰り返しましょう。しっかりと前ももに力を入れて、膝を伸ばしきります。また、あまり下を見ずに(チューブを見ずに)、姿勢良く行いましょう。

8)Single-leg Balance(片足バランス)

バランス能力を鍛えるエクササイズです。片足で立つので、怪我してまだ日が経っていないうちに行うのはやめましょう。ある程度腫れが引き、筋力も怪我をしていない側の脚と大差なくなってから行います。

  1. 壁やテーブルなど、バランスを崩したときにすぐ手で支えることができる場所の近くで行います。
  2. ゆっくり逆足を持ち上げ、片足でバランスをとりましょう。
  3. 20〜30秒ほど行います。

慣れてきて自信がついたら、目をつぶったり、バランスパッドなどの少し不安定な場所に立って、片足バランスエクササイズを行ってみましょう。くれぐれも無理は禁物です。

まとめ

手術前に行うオススメのリハビリエクササイズを8個紹介しました。トレーナーの方はもうお気づきかと思いますが、これらはすべて手術後に行うリハビリエクササイズとしてもよく使われるものばかりです。ぜひ参考にして頂ければと思います。

くれぐれも、ここで紹介したエクササイズを医師や理学療法士への相談なしに行うのはやめてください。実際に診てもらった医師や、その状態・症状を見てエクササイズを処方した理学療法士の方の言うことはしっかり聞いて、守りましょう。その上で、もし他のエクササイズを行いたい場合は必ず「このエクササイズをやってもいいですか?」と聞いて、許可を得てから行うようにしてください。

CHAINON管理人

EXOS8のコピーATSUSHI(山口淳士)。米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)。外資系企業内のフィットネスセンターで健康指導・運動指導を行う。その他、ストレッチポール公式ブログでの記事監修や、GAP英語勉強会の講師なども。

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