SLAP損傷の原因をわかりやすく解説!スペシャルテストの方法も!

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ビーチバレー_SLAP損傷_肩_怪我

野球やバレーボール、バドミントンをはじめとした肩をよく使うスポーツをしている方にとっては、肩の痛みや怪我はできるだけ避けたいですよね?

数多くある肩の怪我の1つとして「SLAP損傷(スラップそんしょう)」と呼ばれるものがあります。アスレティックトレーナーとしてアメフトの現場で数年活動していた私は、何人もの選手がこのSLAP損傷になってしまい、手術をしたケースをみてきました。

今回は、SLAP損傷とはどういう怪我なのか?SLAP損傷をしてしまう原因とはどういうものなのか?さらにはアスレティックトレーナーの方のために、科学的根拠に基づいた、SLAP損傷を確認するために現場でするべきスペシャルテスト方法も紹介していきます。


>>今回の参考文献はこちらです。

SLAP_SysRev_スクショ

Diagnosis Accuracy of Clinical Tests for Superior Labral Anterior Posterior Lesions: A Systematic Review

SLAP損傷を見極めるための数多くあるスペシャルテストの正確性を調べたシステマティックレビューです。

 

SLAPメタアナリシス2008スクショ

A Meta-analysis Examining Clinical Test Utility for Assessing Superior Labral Anterior Posterior Lesions

スペシャルテストに関するもう1つの文献です。こちらはメタ解析です。

 

SLAP_WJOスクショ

Superior labral anterior posterior lesions of the shoulder: Current diagnostic and therapeutic standards

関節唇の解剖やSLAP損傷のメカニズムについて詳しく解説されていました。

 

SLAP損傷(上方肩関節唇損傷)とは?

まず、SLAP(スラップ)について。

SLAPとは、「Superior Labral Anterior Posterior」の頭文字をとったものです。さらに具体的に説明すると、「Superior=上方」「Labral=関節唇(かんせつしん)」「Anterior=前方」「Posterior=後方」となります。

まとめると、「関節唇の上の方が前方から後方にかけて損傷している」という怪我になります。上画像の「SLAP lesion」と指されている部分です。

 

関節唇とは?

関節唇の上方を損傷してしまうのがSLAP損傷という話をしましたが、そもそも「関節唇」ってなんなのでしょうか。

関節唇は、膝関節で言う「半月板」と同じような役割を果たす軟骨です。

肩関節は、身体にある関節の中で最も可動域の大きい関節です。「肩関節」と言うと一般的に指すのは「肩甲上腕関節」ですが、これは肩甲骨と上腕骨でできている関節のこと。

左画像はPhysiocapsuleより, 右画像はLawrenceGAltman.comより

左画像の上に小さくNeckとかGreater Trochanterって書いてありますが(小さくてすみません)、その半球状になっている部分が肩関節を作る側。下の方は肘関節を構成する側です。

右画像は肩甲骨。その中で「Glenoid Cavity(=関節窩【かんせつか】)」とあるところが、肩関節を作る関節の面になります。

 

ゴルフ_肩関節_怪我_SLAP

ゴルフボールが上腕骨。ティーが肩甲骨。

それぞれ見てもらうとわかる通り、上腕骨の方は半球状になっているのに対し、肩甲骨の方はほぼ平面ですよね?この肩甲上腕関節はよく「ゴルフボールがティーに乗っているような状態」と表現されるのですが、それくらい、あまりガツッとハマっている関節ではなく、ちょこんと乗っている感じで、とても不安定な関節なのです。

 

この不安定な関節の構造が、逆に可動域の大きさを生み出しているのも事実なのですが、その分、大きな衝撃を加えるとすぐに関節が外れてしまったり(=脱臼)と、とても怪我をしやすい構造になっています。

 

ちょっと肩関節の説明が長くなりましたが、この不安定な肩関節を少しでも安定させるためにあるのが「関節唇」です。

関節唇は、肩甲骨の関節窩の周り(=縁【ふち】)にくっついている軟骨で、少しでも半球状の上腕骨との関節の面積を増やすためにあります。関節として面している面積が多ければ多いほど安定しますからね。上にある肩関節の画像で「Labrum」と示されている部分が関節唇です。

 

SLAP損傷が起きてしまう原因・メカニズム

SLAP損傷は、スポーツをしている人だけでなく、日常生活の中でも起きてしまう可能性があります。突然起きてしまうタイプ(=急性の怪我)と、徐々に損傷してしまうタイプ(=慢性の怪我)の2種類のメカニズムを紹介します。

 

1)突然起こる急性の怪我

転倒_スキー_SLAP_怪我

急性的にSLAP損傷が起きるのは「転んで身体の後ろに手をついた時」です。ちょうど今の時期だと、スキーやスノーボードをしている最中に転んで手を地面につく。。。ということがあるかもしれません。

勢いよく転んでしまって、腕を伸ばした状態で手を自分の背中側についてしまった時、腕全体が肩の方に押されて、上記した「関節窩」に一瞬圧迫の力が加わります。その時に関節唇に傷がついてしまったり損傷してしまうことがあります。

写真はスキーの画像ですが、普通に道を歩いていて転んでしまった場合でも同じことが起きます。気をつけても防ぐことはなかなか難しいですが、転んで後ろに手をついてからなんか肩が痛い。。。という場合は、関節唇の損傷は疑うべき怪我の一つかと思います。

 

SLAP損傷_怪我_肩_メカニズム

もう1つの急性的なメカニズムは「突然腕を強い力で引っ張られた時」です。

関節唇には上腕二頭筋の腱が付着しているという話を上でしましたが、腕が急に引っ張られると(=牽引の力が働いた時)、その腱が関節唇ごと引っ張り、関節唇が関節窩から剥がれてしまう、ということが起きます。

「腕を強く引っ張られる」と聞くと、日常生活ではあまり起こることはなさそうに思うかもしれませんが、重い荷物などを運んでいて、手が汗で滑って突然その荷物を落としてしまった、というような経験ありませんか?

「重い荷物を突然落とす」その瞬間、重い荷物によって腕は強い力で引っ張られています。そんな動作でも、関節唇を損傷してしまうことがあるのです。

 

ボルダリング_SLAP損傷_肩_怪我

また、ボルダリングをしている時に手が滑って落ちてしまった時なども、手が壁から離れてしまう瞬間に腕に牽引の力が働くために関節唇を損傷してしまうことがあります。

このように、関節唇を損傷してしまうメカニズムは、実は日常生活の中に意外とたくさん潜んでいます。トレーナーとしては、「肩が痛い!」と選手などに言われたときは、いきなり下で紹介するようなスペシャルテストなどを始めるのではなく、まずは「いつから痛くなりだしたのか?」など、しっかりその痛みの原因を聞き出すことから始めることがとても重要になります。肩の怪我というのはSLAP損傷だけではなく、たくさんありますからね。

 

2)徐々に起こる慢性の怪我

アメフト_QB_肩_怪我_SLAP

ここまで何度も出てきていますが、関節唇の上方部には「上腕二頭筋腱」が付着しています(「SLAP損傷とは?」のところの画像を今一度見てみてくださいね)。

いわゆる「オーバーヘッドスポーツ」と呼ばれる、腕を肩よりも高く上げる動作を多く行うスポーツ(野球・バレーボール・アメフト・バスケ・テニス・ハンドボール・水泳など)を行う際、ボールを投げるときなどにこの上腕二頭筋の活動はとても大きくなります。投球動作などをし続けると、この上腕二頭筋の「引っ張る力(=伸張・牽引の力)」が関節唇にかかり続けることで、関節唇が徐々に徐々に損傷していってしまうことがあります。

SLAP損傷になることを防ぐための肩のトレーニングを知りたい方は、ぜひ「野球部必見!絶対にするべき肩の怪我予防トレーニング14選」もご覧ください。野球部必見!と書かれていますが、投球動作を行うスポーツをする方々にオススメのエクササイズを紹介しています。

 

ちなみに…SLAP損傷には4種類ある

「SLAP損傷」と一言で言っても、実は損傷の仕方によって4種類(Type I〜Type IV)に分けられます。今回はこの4種類については詳しくは掘り下げないので、知りたい方はぜひ自分で調べてみてください。

ちなみにちなみに、SLAP損傷の中で一番多く起こると言われているのが「Type II」です。

 

SLAP損傷チェックのためにやるべき4つのスペシャルテストの方法

それでは、トレーナーとして知っておきたいSLAP損傷を調べるためのスペシャルテストを紹介していきます。

CHAINONでは何度かスペシャルテストに関する記事を書いていますが、どの怪我を調べる時でも、このスペシャルテスト1つだけやればわかる!というものはありません。スペシャルテストの正確性に関する研究を読むとそのどれにも、複数のスペシャルテストをやってみて、総合的に判断するべきである、と明記されています。

特に今回紹介するSLAP損傷を見極めるためのスペシャルテストは、どれもSensitivity(感度)とSpecificity(特異度)がそこまで高くありません。他の怪我を調べるとき以上に、複数のスペシャルテストを注意深く行い、必要であればしっかり病院に行って診てもらうことが必要になります。

以下の4つのスペシャルテストをしっかり覚えて、練習して、できるようになってください。

「感度」と「特異度」については、「トレーナー向け!膝のスペシャルテスト・前十字靭帯編まとめ」の記事で詳しく解説しています。ぜひこちらもお読みください。

 

Active Compression Test/O’Brien Test(アクティブ・コンプレッションテスト/オブライアンテスト)

今回紹介するスペシャルテストの中では一番シンプルなテストです。SLAP損傷の判別をメインに行うスペシャルテストですが、ローテーターカフの部分断裂や損傷が起きている場合でもこのテストを行うと陽性になることがあるので注意しましょう。このテストのみでSLAP損傷は判断できません。

  1. 患者は立位か椅子に座る。トレーナーはチェックする肩側に立つ
  2. 患者はまず腕を正面(=肩の高さ)に上げる(=肩関節90°屈曲位)
  3. 肩の高さで、腕を少しだけ内側に入れる(=肩関節10°水平内転)
  4. その位置で肩を回旋させて、親指を地面に向ける(=肩関節内旋位)
  5. トレーナーは手首あたりを上から押し、患者はその力に抵抗する。痛みがあるかどうかを確認
  6. 次に、親指を天井に向けた状態で(=肩関節外旋位)、同じようにトレーナーは上から押し、患者はその力に抵抗する。痛みがあるかどうか確認
  7. 親指を地面に向けた状態の時に痛みが出て、親指を天井に向けた時は痛みが出ない場合、このテストは陽性

 

Compression-Rotation Test(圧迫&回旋テスト)

こちらもSLAP損傷(関節唇損傷)のスペシャルテストとして有名です。Active Compression Testと同じく比較的シンプルで簡単なテストなので、ぜひ覚えておきましょう。

  1. 患者はベッドの上で仰向けに。トレーナーはチェックする肩側に立つ
  2. 患者は腕を肩の高さで横に広げて肘を曲げる(=肩関節90°屈曲&肘関節90°屈曲)
  3. トレーナーは患者の肘と手首を持つ
  4. 肘を肩に向かって押しながら、肩を内旋&外旋させる
  5. 痛みが発生したり、クリック音やポキポキと音がしたら陽性

 

Crank Test(クランクテスト)

システマティックレビューとメタ解析の2つの参考論文で、ともに高い感度と特異度となったのがこの「クランクテスト」です。上で紹介したCompression-Rotation Testとやり方が似ているので、続けて一緒に行うと良いでしょう。

  1. 患者はベッドの上で仰向けに。トレーナーはチェックする肩側に立つ
  2. 上で紹介したCompression-Rotationテストでは肘は肩の高さでしたが、このCrankテストでは腕をほぼ最大限上げた状態にします(=肩関節160°屈曲)
  3. さらに肘を90°曲げて、トレーナーはその肘と手首を持つ
  4. 肘を肩に向かって押しながら肩の内旋&外旋を行う
  5. 痛みが発生したり、クリック音やポキポキと音がしたら陽性

 

Resisted Supination External Rotation Test(抵抗性回外・外旋テスト)

システマティックレビューの中で、感度と特異度がともに一番高いテストとして紹介されたのがこの「Resisted Supination External Rotation Test」です。上で紹介した3つのテストより少し複雑です。

  1. 患者は仰向け。トレーナーはチェックする肩側に立つ
  2. 腕は肩の高さまで上げ(=肩関節90°外転位)、肘は70°くらい曲げる(=肘90°よりもやや伸ばした状態)
  3. その状態からトレーナーは、患者の肩と肘の位置を変えずに手を下側に持っていく(=肩関節外旋位)
  4. その状態をキープしながら、患者は手のひらを地面に向けるように、小指側に力を入れる。トレーナーはその力に抵抗する(=肘関節回外)
  5. 肩に痛みが出たら陽性。SLAP損傷が疑われます

肩関節外転&外旋、肘関節屈曲&回外と動きが複雑なので、しっかり練習してから選手に行いましょう。

 

スペシャルテストで陽性でもSLAP損傷とは限らない

ここまで、SLAP損傷を見極めるためのスペシャルテストを紹介してきましたが、たとえ上記したテストで全て陽性であったとしても、SLAP損傷であるとは限りません。というのも、これらのテストでは、他の種類の肩の怪我が起きている場合でも陽性になってしまう可能性があります。

また、SLAP損傷と他の怪我を併発している可能性もあります。特に「ローテーターカフ(回旋筋腱板)の部分断裂 or 完全断裂」や「バンカート損傷(Bankart Lesions)」は、SLAP損傷とともに併発しやすい怪我である、と研究によって明らかになっています。

 

上記したスペシャルテストをやった際に陽性反応が出やすい怪我は以下のようなものです。

  • 滑液包炎(Bursitis)
  • 回旋筋腱板(ローテーターカフ)断裂
  • 上腕二頭筋腱の怪我
  • 関節包の損傷
  • バンカート損傷(Bankart Lesions)
  • ヒルサック損傷(Hills-Sachs Lesions)

 

まとめ

SLAP損傷について、解説してきました。

肩関節は可動域が大きい分怪我もしやすく、怪我の種類もとても多いため、トレーナーとしてその怪我を評価するのはとても難しいです。

しっかりと肩関節の構造を理解すること。怪我が起きたメカニズムを聞き出すこと。そして、今回紹介したようなスペシャルテストを正確に行うこと。

トレーナーとして、その人はすぐに病院へ行く必要があるのか、それとも数日ケアをすれば治るようなものなのか。すぐに伝えてあげることで、選手や患者さんの不安は解消されるとともに、迅速な対処やケアは怪我を最小限に抑えることに繋がります。

少しでも皆さんのお役に立てたら幸いです。

 

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