みなさん「筋トレ」と聞くと、どのようなエクササイズが頭に浮かびますか?腹筋とか背筋、スクワット、ダンベルを持って行うもの、本格的なマシーンを使ったものなどが浮かぶかもしれません。

そんな中、きっと誰もが一度はやったことのある筋トレの1つに「腕立て伏せ(=プッシュアップ)」があがると思います。

特に特別な道具も使わず、自分の身体の体重を「ウエイト(=重り)」として利用して、腕〜肩〜肩甲骨周りを鍛えることができる、安全でどこでもできる素晴らしいエクササイズの1つです。

一見、とてもシンプルなエクササイズに見えますが、手足の位置を変えたり、少しだけやり方を変えるだけで、少し簡単になったり、逆にキツくなったり、違う筋肉をより鍛えられるようになったりします。

今回は、いろんな腕立て伏せのやり方を紹介していきたいと思います。


>>参考文献はこちらです。

pushup-articleThe Biomechanics of the Push-up: Implications for Resistance Training Programs
様々な腕立て伏せの方法を紹介するとともに、それぞれの方法での腕、肩、肩甲骨周りの筋肉の働きも調べています。

1)普通の腕立て伏せ

手は肩幅にひらき、腕と地面が90度になる位置に手をセットします。足も肩幅くらいか、肩幅よりすこし狭いくらいでいいでしょう。両足が近いほどバランスがとりづらくて難しくなります。

肘をしっかり伸ばした状態で、頭〜首〜背中 (背骨)〜骨盤〜股関節〜膝〜足までをまっすぐ一直線にします。

これが、基本的な腕立て伏せのスタートポジションです。そこから、頭から足までの一直線は常にキープしながら、肘を曲げ伸ばしして腕立て伏せを行います。

【補足】少しレベルをあげるなら? 上体を下げたときに肩甲骨を内転(左右の肩甲骨が近づく・くっつく動き)させ、上体を上げたときに外転(左右の肩甲骨が外側に離れる動き)をさせると、より肩甲骨周りの筋肉が働きます(前鋸筋, 菱形筋など)。※ 肩甲骨の内転は、右下の写真をみるとわかりやすいです。

2)手の位置を変えた腕立て伏せ

少し手の位置を変えるだけで、効果が変わってきます。

2−1)ワイドプッシュアップ

手の位置を肩幅よりも広く(肩幅の150%)します。そうすることで、肩幅での腕立てよりもより大胸筋(胸の筋肉)に効くエクササイズとなります。

更に、上体を下げるときに肘を外側に開くように(わきをあけるように)曲げることで、より大胸筋に効くようになります(上の写真を参考に!)。

2−2)ナロウプッシュアップ

ナロウとは英語の「Narrow(=狭い)」からきています。つまりワイドとは逆で、手の位置を肩幅よりも狭く(肩幅の50%)します。そうすることで、大胸筋があまり働かなくなり、より上腕三頭筋(二の腕の筋肉)に効くエクササイズになります。

更に、上体を下げるときに肘を体にくっつけて(わきをしめて)曲げることで、より上腕三頭筋に効くようになります(上の写真を参考に)。

3)手足の高さを変えた腕立て伏せ

pushup-stairs
両足を何かの上に乗せる

ベッドやいすやなにか箱のようなものなどに手や足を置いて腕立てをすることで、腕立て伏せの強度を変えることができます。

今回の参考文献の中での実験では、高さの違うボックス(30.5cmと61cm)に手をついて腕立て/足をおいて腕立てをして、どれくらい腕立て伏せの強度が変わるのかを調べています。

結果は以下の通りです(上の方がラク。下にいくほどキツい)

  • 61cmボックスに手をついて腕立て(足は地面):体重の約41%の負荷
  • 30.5cmボックスに手をついて腕立て(足は地面):体重の約55%
  • 普通の腕立て(ボックスなし):体重の約64%
  • 30.5cmボックスの上に足をのせて腕立て(手は地面):体重の約70%
  • 61cmボックスの上に足をのせて腕立て(手は地面):体重の約74%

足の位置を上げると、キツくなっていくんですね。

いすやベッドの上に足を置いて、足を手よりも高い位置にセットして腕立て伏せをすることで、しっかり体を支えようと、より肩甲骨周り(上部・中部・下部僧帽筋など)の筋肉が働くようになります。

4)不安定なモノに手をおいて腕立て伏せ

pushup-balance-ball

手を地面のような固い場所ではなく、グラグラする不安定な場所に手をついて腕立てをすることで、普通の腕立て伏せよりもキツくなります。使われる代表的なモノは「バランスボール」です。

バランスボールに手をついて腕立てをやる (上の写真のように) のと、それと同じ高さのベンチ(安定した場所)に手をついて腕立てをやるのを比べた実験の結果、バランスボールに手をついて腕立てをやると大胸筋と腹直筋がより働くようになった、ということです。

手を置いている場所がグラグラするために、腹筋が働いて体を安定させようとするんですね。バランスボールを使って腕立て伏せをすることで、腕・肩周りだけでなく、腹筋も鍛えることができるんですね!

ちなみにこの実験では、バランスボールの上に足をのせて腕立てと、同じ高さのベンチに足をおいて腕立てするのも比べていますが、結果は、どちらの方法も筋肉の活動にたいして変化はなかったと報告されています。

バランスボールを使うと、様々な身体の部位を自宅でも簡単に鍛えることができます。「バランスボールを使った体幹トレーニング5選【上級者向け】」という記事もあるので、もし興味があればぜひご覧ください。

5)フォール・プッシュアップ

5)と6)は少し強度の高い腕立て伏せです(プライオメトリクスと呼ばれる種類のエクササイズです。プライオメトリクスについてはまた今度記事にします)。なので、1〜4の腕立て伏せがしっかりできる人が行いましょう。

「フォール」とは「落ちる」という意味です。フォール・プッシュアップは、両膝立ちで腕は前に出した状態からスタート。上体はまっすぐ保ったまま(股関節や背骨は曲げずに)、そこからゆっくり上体を地面の方に倒していきます。手を地面についたらすぐに肘を曲げて上体をとめます。顔が地面に当たらないように気をつけましょう(上のYouTubeを参考にしてください)。

6)クラッピング・プッシュアップ

「クラッピング」とは「拍手」という意味。つまり、腕立て中に拍手をします。

スタートは普通の腕立て伏せと同じです。そこから肘を曲げて上体を地面の方へ下げるのも同じ。そこから、地面を思い切り押し、手を地面から離します。手が離れたら空中で1回拍手をして、元のスタートポジションに戻ります(上のYouTubeを参考にして下さい)。

最初はまず拍手はせずに、手を地面から離すことだけをやってみましょう。それができたら、空中で拍手に挑戦してみましょう。

7)膝立ち腕立て伏せ

pushup-kneeling

これは、女性・お年寄り・腕や肩のリハビリ中の選手といった、そんなに筋力がない人でもできる腕立て伏せです。

膝立ち腕立て伏せとは、腕立て伏せを膝をついたまま行うものです。右の写真の状態がスタートポジションです。ここから、肘を曲げ伸ばしして腕立て伏せを行います。膝をつくことで、腕で支える体重が約15%ほど減るため、腕に筋力があまりない人や、腰に問題がある方でも安全に行うことができます。

「高齢者と筋トレ」についての記事を書きました。「高齢者は筋トレをした方が良い理由|おすすめの筋トレも5つ紹介」もぜひ読んでみてください。

まとめ

自宅でもできる腕立て伏せを7種類紹介しました。

最初にも言いましたが、基本的に腕立て伏せは特別な道具を使わず、どこでも行うことができるとても安全なエクササイズです。ダンベルやマシーンを使ったエクササイズをやる前に、腕立て伏せなどの自分の体重のみを使ったエクササイズで、しっかりした筋肉の土台をつくりましょう。

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